世界一高価なスパイス ”サフランの魅力 高原千芙美
世界一高価なスパイス ”サフランの魅力
サフランの魅力
今回は、私が最近魅了されている、サフラン
Crocus sativus L.(アヤメ科サフラン属)をご紹介します。読者の皆様もサフランの魅力を知って、ぜひ食生活に取り入れてください。
スパイスとして使うのは、サフランの濃紅色のめしべの柱頭と花柱です。秋、開花と同時に手で一本一本めしべを摘み、すみやかに乾燥させます。ごくわずかな日数で昼夜を問わず一気に行われます。170輪の花からとれるめしべがわずか1g。古代ギリシア、ローマの時代から時を経ても“世界一高価なスパイス”と言われているのも理解できます。サフランはほんのわずかな量でも十分な効果と存在感を発揮します。
サフランの特徴は魅惑的な香りと、ほろ苦い風味、そして鮮やかな色彩です。サフラン特有の香成分サフラナールsafranalは鎮痛、鎮静、通経作用があります。苦味成分は苦味配糖体、ピクロクロシンpicrocrocinです。
鮮やかな黄金色のサフラン染料は古代のギリシア、ローマ、アイルランドなどで栄誉と高貴の象徴とされて、王侯貴族の衣装を染めていました。また、サフランを使うパエリア、ブイヤベースなどはその明るい色が私達の食欲を刺激してくれるようです。この色は水溶性のカロテノイド系色素、クロセチンcrocetinとクロシンcrocinです。クロシンには中枢神経の活性化、記憶力増強作用があることが解明され、クロセチンは血圧降下作用、ウサギの筋肉内投与で血清コレステロール値、血清トリグリセリド値を下げることなどが報告されています。
サフランを手軽に親しむためにぜひ召し上がっていただきたいのがサフランティーです。サフラン3〜4本に熱湯100〜150mlを注ぎ5分程度おき、お好みでハチミツなどを加えます。冷えやカゼ気味のとき、生理痛・生理不順・更年期など女性のトラブルに効果を発揮します。ただ、通経作用が強いので妊婦さんは飲用を避けてください。
また中国の薬草書・本草綱目には「番紅花」、別名「泪夫藍(サフラン)」という名で収載されています。その中に「心に憂いがありそれが内向して気の散ぜぬものに血を活かす薬」とあるように、気持ちを落ち着かせ気分を明るくする効果などもあります。
よく栽培されているイヌサフラン
Colchicum autumnale (ユリ科)はサフランに似てサフランにあらず、毒草です。めしべ、球根など植物全体に含まれるアルカロイドのコルヒチンは、痛風の原因となる高尿酸血症の発作治療薬に使われることもありますが、毒性が強く一般には使えません。1世紀のローマの医師ディオスコリデスも「これを食べるとキノコ中毒のように窒息して死ぬ」と書いています。
※サフランとイヌサフランはおしべの数で見分けます。サフランはおしべが3つ、イヌサフランは6つです。
緑のポシェットハーブレシピ 〜サフラン入りクリームチーズのディップ〜
【材料】
・クリームチーズ 250g
・サフラン(乳鉢ですって荒く粉状にする)小さじ4分の1〜3分の1
・オレンジマーマレード 60gくらい
【作り方】
1:クリームチーズを室温に戻しておく。ボウルに入れて木じゃくしでよくかき回し、滑らかなクリーム状にする。
2:サフランを入れ均一になるようによく混ぜる。混ぜているとチーズが鮮やかな黄色になってきます。
3:味見しながらマーマレードを入れて混ぜていき、好みの甘さにしてできあがり。
〜サフラン入りハチミツ〜
ハチミツにサフランの色が移って、だんだんに琥珀色になってきます。レモン精油と一緒に、レモン果汁とあわせてなど、いつものハチミツのようにお使いください。
【材料・作り方】
ハチミツ250gに乳鉢ですって荒い粉状にしたサフラン小さじ4分の1〜3分の1を振り入れる。ハチミツの容器を数回、ゆっくり逆さにして中を均一にする。
高原千芙美(たかはら ちふみ)
東京薬科大学卒、薬剤師。生活習慣病予防士。アロマ塾認定講師。ハーブアロマ緑のポシェットを主宰。毎日文化センター、朝日カルチャーセンター、昭和女子大オープンカレッジ、東武カルチュアスクール、産経学園、多摩市民塾などでアロマテラピー、ハーブに関する講座を持つ。また、中野区、練馬区など区民講座の講師としても活躍中。FM多摩G-Windにレギュラー出演。
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