最新の漢方医学
特集:がんと漢方薬を考える


   


抗がん漢方薬とは?

T. 漢方薬は、どのような場面で、現代のがん治療に活用されているのか?

第一に、がんの診断や治療においては、まず西洋医学を最優先すべきと考えます。
手術などで確実にがんを除去できる状態の時には、漢方薬や代替療法に、こだわるのはまちがいと考えます。

それでは、漢方薬は、どのような場面で、現代のがん治療に活用されているのでしょうか?
また、漢方薬は、どのような時に役立つものなのでしょうか?

がんといっても、さまざまな種類、状態があります。ですから、確定的なコメントではありませんが、
初期のがんの場合→西洋医学を優先→外科手術でがん細胞組織を摘出する。
その後、体力回復や再発予防の目的で、漢方薬は、効果があり役立ちます。
1つのがんが発生した人間の体は、ほかのがんも発生しやすい状態にあると考えられます。
このようながん体質を改善する目的に、漢方薬は、有効で役立ちます。

外科手術によるがん細胞組織の摘出が困難で、化学療法や放射線療法しかできない場合。
漢方薬は、副作用の防止や体力回復の目的で、併用するほうが、併用しないより、よい効果、結果が得られます。
がん治療に耐えられる体をつくる、がん細胞に負けない体力をつけることは、西洋治療の効果を高めることにつながります。

また、抗がん剤の効果が、期待したほど得られない場合、抗がん剤に抵抗性を示す場合、適切な抗がん剤が選択できない場合、
副作用に耐えられず抗がん剤を、もうこれ以上投与できない場合には、抗がん活性、がん免疫を活性化する漢方生薬を混合した漢方薬、
抗がん活性の期待できる健康食品を服用してみるのも1つの選択肢と考えられます。

末期がんの患者さんで、もうこれ以上、西洋医学の治療(手術、抗がん剤、放射線治療)が困難な場合、通院、自宅待機の患者さんの場合には、
漢方薬を主体とした代替医療のほうが、生存期間を高めたり(延命)、生活の質(QOL)を改善することが、期待できます。

がん細胞の増殖をできる限り抑え、免疫力をできる限り活性化できれば、最大限に、がんとの共存を果たし、もう一歩進んで、
がんの縮小も期待できます。

がんを攻撃する方法のみを選択している場合は、たとえ末期に近い場合でも、最後まで化学療法を使って治療しようとします。
また、もうすでに体力の限界がきている高齢者の早期がんでも外科手術を行おうとします。
「悪いものは取り除かなければいけない」という考えに支配された選択主のみでいる場合、
反対に、体力を低下させて死を早める危険性もあるからです。
漢方薬の考え方と治療手段を知っていれば、もっとよい効果(延命、生活の質の向上、満足感)が期待できるはずです。


U. 具体的に、どのようなときに漢方薬、健康食品を服用したらよいのか?


@がん細胞への攻撃(がん細胞と戦う)が、もはや必要ない状態のとき

→がんの再発予防、がん体質の改善

A侵襲的治療を行っているとき(がん細胞組織を切除、除去、消去)

→手術、抗がん剤、放射線治療等の副作用の予防、体力回復、効果増強

Bがん細胞の攻撃を主眼とした西洋医学ではもはや望みがないとき

→体の自然治癒力や抗がん免疫力を主体とした漢方薬、健康食品への期待と服用
→がんとの共存、がんの退縮、QOLの改善


V. がんの患者さんが、漢方薬、健康食品を服用する目的を考える

@西洋医学のがん治療(手術、抗がん剤、放射線治療)に耐えられる、強い体を作る。

外科手術、抗がん剤、放射線療法などの効果が期待できる場合は、積極的に行うべきです。
これらの攻撃的な治療によって生じる体力や抵抗力の減弱を、漢方薬、健康食品を服用して、可能な限り防止し、
合併症の発症を回避し、体力回復をはかる目的で、漢方薬、健康食品の服用は、間違いなく有用と考えられます。
がん免疫の低下の防止や回復促進に有効な漢方薬(補剤)は、外科手術、抗がん剤、放射線治療などの攻撃的な治療の結果、
引き起こされる種々の副作用を防止する。あるいは軽減することが可能です。
また、感染に対する抵抗力を高めて日和見感染(免疫力や抵抗力が低下したときに細菌やウイルスに感染すること)を予防することも可能です。
がんの患者さんの栄養状態やがん免疫力が高いと、西洋医学の抗がん剤もよく利きます。
がんの患者さんの体全体の自然治癒力を高めることは、西洋医学のがん治療に耐える体をつくり、治療効果を高めることにつながります。

A生体防御機能を調節することにより、がん患者さんのQOL(生活の質、満足度)を高める

体の異常、ホルモン、自律神経、代謝のバランスの乱れを調整することにより、
全身状態の改善やQOL(生活の質、生命の質)を高めることが可能です。
さらに、漢方薬は、体力を弱めることなく、副作用もなく、痛み、食欲不振、倦怠感など、
がん患者さんのさまざまな症状の改善に有用です。

Bがん患者さんの抗がん剤治療や放射線療法の効果を高める

がん患者さんのがん細胞組織を直接、完全に取り除くためには、西洋医学の治療方法がベストです。
漢方薬の有用性は、抗がん剤、放射線療法あるいは外科手術による、がん患者さんの生体機能の障害を防止、矯正することにより、
これらの治療効果を高めることが期待できます。
漢方薬の駆於血剤を調合し、がんの患者さんに服用してもらうと、血行改善による治療効果の増強が期待できます。
また、ある種の生薬には、がん細胞の悪性度や増殖速度を抑えたり、アポトーシス(細胞死)を起こさせる作用なども確認されています。

Cがん患者さんの、がんになりやすい体質を、がんになりにくい体質へ変化させる

がんが一度体にできた患者さんは、できていない患者さんにくらべて、がんになりやすい体質といえます。
このような患者さんは、たとえ1つのがんを克服しても、またすぐ別のがんが発生するようでは、元も子もありません。
体ががんになりやすい状態では、再発や転移も起こりやすくなっています。
がん免疫や生体防御機能の低下、炎症やフリーラジカル(活性酸素)の発生は、がんの発生や再発のリスクを高めます。
つまり、がんになりやすい体質傾向を誘発します。
漢方薬(補剤)による免疫増強作用や、漢方薬(清熱剤・駆於血剤)による抗炎症作用、
組織の血行を改善する作用、ラジカル消去作用などは、がんの発生予防や再発予防の目的に効果が期待できます。


W. 抗がん剤と漢方薬、健康食品併用のメリットを考える

実は、最近、がん患者さんの死亡原因のうち、がんそのものの要因ではなく、明らかに抗がん剤や外科手術などの副作用が死に密接に関連しているものが、かなりみうけられています。西洋医学の放射線、抗がん剤治療は、がん細胞を抑制、殺傷しますが、同時に正常な細胞までをも傷害します。がん患者さんに対する放射線、抗がん剤投与による副作用は、非常にやっかいな問題であり、治療効果にも大きく影響しています。

抗がん剤の多くは骨髄に影響を与え、体を守る白血球などをつくる働きを低下させるため、感染症にかかりやすくなります。
そのため抗がん剤投与を受けている患者さんは、繰り返し、何度も、白血球の数が測定され、数が少なくなりすぎた場合には、
次の治療が延期されるか、薬剤の投与量が減らされます。
また、抗がん剤は、消化管の粘膜を障害して下痢を起こしたり、食欲を低下させます。
さらに、肝臓や腎臓の機能を障害することもあります。
がんの患者さんが、がんを治療するために抗がん剤を服用して、また、服用した抗がん剤の副作用を治療する新薬を、さらに服用する。
というような、悪循環も存在しています。この薬は、抗がん剤の副作用を減らしますが、肝心の患者さんが生きていくための体力や抵抗力の低下を
防止するという点では、まだ、まだ、十分ではなく、この点において、副作用なく、体力、抵抗力をつけていく漢方薬は、西洋薬に勝っています。

近年、多くの研究報告により、漢方薬(特に補剤)と抗がん剤を併用すると、抗がん剤の副作用を軽減し、患者の免疫力を低下させることなく、
所定の濃度と期間、抗がん剤を投与できる。ことがあきらかとなってきています。
日本における多くの臨床的研究において、抗がん剤投与や放射線療法のみの場合にくらべて、
同時に漢方薬を併用した場合、治療の有効率が高くなること、副作用が軽減すること、がん患者さんのQOL(生活の質、満足感)が、
あがることにおいて、優れていることが確認されています。


X. がんの患者さんに有用と考えられる生薬

@補益薬(体力や抵抗力を増す生薬)
補気、健脾薬(消化吸収を高めて元気をつける生薬)  人参、黄耆、白朮、蒼朮、山薬、甘草、大棗、膠飴、粳米、茯苓など
補陽薬(体をあたためて新陳代謝を高める生薬)  附子、桂皮、乾姜、杜仲、蛇床子、淫羊かく、丁子、山椒など
補血薬(貧血や栄養不良を改善して抵抗力を高める生薬)  当帰、芍薬、熟地黄、何首烏、阿膠、枸杞子、竜眼肉、遠志、酸棗仁、小麦、鶏血藤など
滋陰、生津薬(体液を生成し体のうるおいを増す生薬)  麦門冬、天門冬、加楼根、山茱萸、五味子、地黄、玄参、百合、胡麻、阿膠など

A理血薬(血液をよい状態にする生薬)
止血薬(出血を止める生薬)  艾葉、阿膠など
活血化於薬=駆於血薬(組織の血液循環をよくする生薬)  当帰、川弓、延胡索、欝金、我朮、益母草、紅花、牛膝、蘇木、桃仁、牡丹皮、赤芍、大黄、山サ子、山稜、丹参、地竜など

B理気薬(気のめぐりをよくして気分や体調をととのえる生薬)   陳皮、青皮、き実、き穀・香附子、木香、蘇葉、薄荷、烏薬、柿帝、半夏、厚朴、縮砂、大腹皮、びん榔子、柴胡、疾利子、加楼仁、欝金、延胡索、川弓、山サ子、我朮、三稜

C清熱薬(炎症を抑え、解熱させる生薬)
清熱瀉火薬(熱をとる生薬)   石膏、知母、山史子、夏枯草、決明子、大黄、木通、柴胡など
清熱解毒薬(炎症を抑え、抗菌作用がある生薬)  金銀花、連翹、忍冬、菊花、牛蒡子、升麻、山豆根、意以仁、冬瓜子など
清熱涼血薬(体液を補いながら熱をとる生薬)  地黄、玄参、牡丹皮、赤芍、紫根、地骨皮、丹参など
清熱燥湿薬(さん出液を伴う炎症を抑える生薬)  黄連、黄ごん、黄柏、竜胆、苦参、咽陳高、沢瀉など

D利水薬(体の水分の分布と代謝をよくする生薬)   茯苓、猪苓、沢瀉、防巳、麻黄、蒼朮、白朮、車前子、意以仁、木通、黄耆、大腹皮、呉茱萸、益母草、牛膝、桑白皮、びん榔子など

F抗がん生薬(経験的にがんの患者さんに用いられている生薬、基礎、臨床研究で、何らかの抗がん活性が認められる生薬)
白花蛇舌草、半枝蓮、蒲公英、牛蒡子、虎杖根、山豆根、拳参、鶏血藤、冬虫夏草、五味子、霊芝、鹿角霊芝、雲南田七、三七、朝鮮人参など



Y. 西洋医学のがん治療に、よく用いられているツムラ漢方エキス製剤(日本で一番多く使用されている漢方薬)

がんの状態および治療に伴う合併症などに対して、一般的に使用されるツムラ漢方エキス製剤をまとめて見ました。
実際は、個々の病気の状態に合わせて、もっと多くの漢方薬が使用されています。

(1)体力低下やがん悪液質(毒素がたまって全身衰弱した状態)の改善
   補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯

(2)手術後の体力回復促進
   補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯

(3)抗がん剤や放射線療法に伴う副作用の防止および回復促進
   下痢 : 五苓散、半夏瀉心湯、真武湯、人参湯
   悪心・嘔吐 : 小半夏加茯苓湯
   放射線障害 : 柴苓湯
   造血機能障害 : 十全大補湯、人参養栄湯、加味帰脾湯

(4)術後合併症の改善
   術後イレウス(腸閉塞) : 大建中湯
   食欲不振 : 四君子湯、六君子湯、補中益気湯
   消化管運動障害 : 半夏瀉心湯、六君子湯、平胃散、小建中湯
   便通異常(下痢) : 半夏瀉心湯、啓脾湯、六君子湯、真武湯、人参湯
   術後不定愁訴 : 補中益気湯、半夏厚朴湯、加味省遥散、加味帰脾湯
   咳嗽・痰喀出障害 : 麦門冬湯、清肺湯、二陳湯
   感染性発熱 : 小柴胡湯、黄連解毒湯、滋陰降火湯

(5)発がん高リスク患者(慢性炎症など)の発がん予防
   ウイルス性肝炎 : 小柴胡湯、柴胡桂枝湯、補中益気湯、(+駆於血薬)

(6)がん治療後の再発予防
   補剤(十全大補湯、補中益気湯、人参養栄湯)
   (そのほかに駆於血剤、理気剤、抗がん生薬などの併用)

(7)精神的失調(がんノイローゼ、抑うつなど)
   加味省遥散、加味帰脾湯、半夏厚朴湯

(8)難治性のがんの治療
   上記、漢方エキス製剤、全品目を症状・体質に応じて、組み合わせて(合方して)使い分ける。

実際は、エキス製剤(方剤)の合方だけでなく、生薬をがんの患者さんの症状・体質に合わせて、複数選択調合し煎じ薬で投与する時には、
上記、抗がん生薬を別包、加味することも含め、多種、多様な、がん患者さんの状況に、対応でき、さらに効果を高めることが可能となります。


以上、


監修:医学博士小松靖弘(元株式会社ツムラ漢方生薬研究所長、元株式会社ツムラ学術部長)

監修:医学博士大山博行(元株式会社ツムラ企画開発室漢方製剤開発部)



漢方薬は、体の抵抗力や治癒力を高める

「漢方薬は、数千年の歴史があり、体の抵抗力や治癒力を高めるノウハウの宝庫です。
このノウハウは、長い歴史のなかで培われてきたものであり、サプリメントや健康食品を用いた代替医療より、
効果や経済性の面においても優れています。」

漢方では、気・血・水という病理概念があり、これらのバランスが崩れることによって病が発生すると考えられています。
“気”は生命エネルギー、“血”は血液、“水”は体液やリンパ液を指しますが。 
「体力、気力と共に、内臓機能が低下した状態を“気虚”、栄養状態の障害を“血虚”といいますが、
抗がん剤治療などを受けていると、元気もなくなるし栄養状態も悪くなる。
すなわち、気虚と血虚の混合状態に陥ってしまいます。
漢方薬の調合は、そのような状態に応じて、栄養状態を高めるとか、血行をよくして於血(血の滞り)を改善するとか、
がんの患者さん一人ひとりにあった漢方を調合することが一番重要になります。」

調合漢方薬(有用な生薬を、症状・状態・体質を考慮、複数選択し煎じて服用する、オーダーメイドの漢方薬)

漢方薬の煎じ薬は、150種類以上の生薬のなかから、患者の個々の状態によって、10〜20種類を調合します。
患者さんには、この調合漢方薬を煎じて服用して頂きます。 
東洋医学の場合、がんの患者さんに免疫だけを上げるようなことはしません。
患者さんの根本原因となる病態を改善するために、まず、気の巡りをよくし、於血を改善して、血行を促す必要もあります。
すなわち、『駆於血剤』や『補気剤』『補血剤』を用いるのが、漢方の基本にあります。
炎症を訴える患者さんには、さらに『清熱解毒薬』を用いることが必要になります。

がんの末期だと言われると、患者さん自身、ご家族の人たち、多くの人はもう打つ手は何もないと考えがちですが、
東洋医学の基本に立ち返り、がんの患者がなぜ亡くなるのか?
この回答を求めれば、それは、東洋医学のいう「悪液質」のせいだと考えられるのです。
「がんが大きくなると、老廃物とか、沢山の有害物質を出して体を消耗させていく。
しかし、人間が本来持っている自然治癒力や生命力をうまく引き出してやれば、悪液質を改善し、延命も可能である」
と結論しています。

漢方薬のなかには、抗腫瘍活性、血行改善、血液浄化、抗酸化作用などを持つものの他、この「悪液質」を改善するものも存在します。

体力や気力、生命力などを改善する処方を用いれば、治癒力も高まるし、延命にもつながります。

漢方薬には、このような患者のQOL(生活の質)を改善するさまざまなノウハウがあるのです。

自然治癒力を重視し、生命力の可能性を最大限に活用するような、東洋医学(漢方薬・鍼灸・臨床心理学・気功等)を用いて、
がんの休眠や、がんとの共存を目指した、総合的な代替医療(漢方薬・鍼灸・気功)にも、注目して行きましょう。


東洋医学では、「天人合一の理論」から、がんは全身の病と考える

漢方薬と健康食品が術後の全身状態改善に役立った症例をご紹介します。

症例 胃がん(38歳女性)

経過:進行胃がんのため、某地方のがんセンターにて胃全摘とリンパ節郭清を受けた。
退院時には、体重が約3kg減少し、その後さらに2kg減り、術前の40kgから35kgまで痩せた。
手術後は、大変疲れやすく、家の中を歩くのがやっとと言っていた。
もともとやせ型、胃腸虚弱気味であったが、術後は、食欲不振に陥り、ますます食欲が低下、さらに下痢気味であった。

主治医に相談すると、消化剤と整腸剤、ビタミン剤を処方されたが、その他の対応はなかったという。
そのため、患者は自発的にアガリクスやプロポリスなどの健康食品を数種類摂っていた。
しかし食欲不振や疲労・倦怠感は改善せず、体重はさらに減少して33.6kgとなった。
知人の紹介で、大山漢方堂薬局に来局した。その時は、体重33.4kgであった。
そこで、私は、消化吸収機能を高め、栄養状態を改善する目的で、補中益気湯合人参湯
を開始した。
多数併用していたサプリメントは一旦中止してもらい、協和アガリクス茸のみを継続服用することとした。

2週間後に再来すると、軟便〜下痢が消失し、食事がおいしく摂れるとのこと。体の活力が出て倦怠感がなくなった。
同様の漢方を続けたところ、6ヵ月後には体重が術前とほぼ同じ39.2kgにまで回復した。


考察

西洋医学のがん治療は、病巣を取り除く、あるいは叩くことを主眼として発展してきた。
しかし、その一方で、「全身病」としての観点が、少し欠落していたという疑問は少なからずあるのではないだろうか。
局所に発生したがんは「氷山の一角」に過ぎない。基盤にある自己治癒力・免疫力の低下、慢性炎症、食生活の偏りなどの要因を取り除くことを並行して実施するべきことは、誰もが認めることだろう。ここで、注意すべき点は、まず栄養状態と血液循環を正常化させなければ、がんに一般的に用いられる免疫増強作用をもった医薬品やサプリメントをいくら服用しても、十分に効果を得られないということだ。本症例においても、免疫を上げるとされる数種類のサプリメントを多用していたにもかかわらず効果は得られなかった。この症例は、気を補う「補剤」である補中益気湯をベースに用いることで、全身の諸機能が良好に保たれたと考えられる。消化吸収、血液循環、心理的ストレスなどの状態を症例ごとに把握し、10〜20種類の生薬を組み合わせることで、漢方薬では、免疫活性のみならず、抗酸化作用、血行促進作用など、その患者さんの状態に合った様々な生薬を調合できるのが大きな強みである。なお、補剤と呼ばれる漢方処方には、T細胞の分化をTh1優位にする作用や骨髄の造血機能を回復させる作用が報告されている。酸化ストレスが亢進した状態では、がん細胞の悪性化が促進されるため、抗酸化ビタミンであるVC、VEの摂取もよい。
当薬局では、まず第一に調合漢方薬(オーダーメイド)、漢方薬以外に何かと、問われると、これらのサプリメントを推奨している。


 特集:悪性新生物(がん)を考える


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