最新の漢方医学

特集:最新のがん情報 アガリチンの考察

Health Life 第39回 掲載記事より引用

一連のアガリクス報道の中で、発がんプロモーションにかかわる成分としてアガリチンがクローズアップされている。

突然変異原性のある素材が
商品化されたのは不思議

サン自然薬研究所 代表取締役・医学博士 小松靖弘

 がん患者さんの間で「アガリクス」は重要な食品となっている。その食品に降ってわいた事件に製造、販売業者のみならず、消費者にも大きな衝撃を与えたのは事実である。そこで、先日のアガリクスに関する事件ですっかり有名になった「アガリチン」について少し調査してみた。
 スーパー・マーケットなどに並んでいるマッシュルーム≠ニ日本語で呼んでいるキノコ、この学名はAgaricus bisporus(アガリクス・ビスポラス)と言って、有名になっているアガリクス(Agaricus blazei、アガリクス・ブラゼイ)と同じ仲間である。このアガリクス属のキノコには共通してアガリチン≠ニいう毒性物質が含まれている事が学術雑誌に報告されている。 では、このアガリチンの毒性はというとそれ程強いと言うものではなく、メルク・インデックス(化学物質の辞書のような本)を見ても、その急性毒性についての記述はない。
 しかし、今回の厚生労働省研究で、キリンウェルフーズが販売していたアガリクス製品に突然変異原性が認められたと報告された。一般的には、販売しようとする素材に突然変異原性が認められた段階でその商品化は中止される。その意味でこの素材が商品化されたのが不思議でならない。
 アガリクスに限らず、これまでの健康補助食品を販売している企業が研究に力を注いで来なかったことがこのような事態を招来した訳で、反省してきちんとした科学的検証に基づいた健康補助食品の開発を望みたい。
 話を元に戻すと、アガリチンは60年代に発見され、科学構造式も明かにされ、合成もされた。水に良く溶ける物質で、消化管から極めて吸収され易い物質である。 食用のキノコであることから、どのようにしたら毒性が軽減、消失するかなど研究されている。 新鮮なマッシュルームには0.1μg から0.8μg/g(平均すると0.45μg/gほど)のアガリチンが含まれると報告されている。Schulzova V.(Czech’Republic)らはマッシュルームのどこにアガリチンが含まれるかを調べたところ、傘の皮膜(上皮)と、痞だの部分に多く含まれ、クキ(柄)の部分は少ないと報告している。
 クキの部分は菌糸体で構成されていることを考えると、培養菌糸体に含まれるアガリチンの量はかなり少ないことが推測されるが、定量してする必要がある。 アガリチンは熱、酸素などに弱く、加熱調理をすることで、ほとんど分解されてしまうので、料理をして食用としている限り、健康に被害を与える状況は生まれて来ないと考えられる。
 アガリクスの熱水抽出エキスの場合、含まれているアガリチンは加熱分解していることが考えられ、今回の試験では仙生露≠ノ突然変異原性が認められなかったことを考えると、もしも、アガリチンが影響していたと仮定すると、加熱処理が有効に作用していたものとも考えられる。
 アガリチンは吸収され易い物質である事は先に述べた。アガリチンは代謝も早くWaltonK(University of Surrey,UK)らの研究によると24時間以内に尿、糞中にほとんどが排泄されるとしている。また、その中に含まれる代謝物は突然変異原性を示さないことも報告している。
 アガリチンという化合物はチッソ(N)が2分子結合した、ヒドラジン(H2N=NH2)の誘導体でタンパク質、核酸などに結合し易い性質を持っていて、この化合物の誘導体には突然変異原性があることが知られている。アガリチンの前駆物質、あるいは代謝物である4一(ハイドロキシ・メチル)フェニルヒドラジン(4MHBD)は強い突然変異原性を持っている。Shephard SE.(Swiss Federal Institute of Technology、Swiss)、Walton KらはDNA(遺伝子)との結合について研究しており、マウスに経口投与されたアガリチンは腎の組織のDNAに最も多く結合しており、肝臓、腎臓のDNAにも少ないながらも結合する事を認めている。また、Walton Kらはアガリチン自体にはそれ程強い突然変異原性を示すわけではないが、腎臓の酵素で代謝された4MHBDが突然変異原性を示す一方で、肝臓の酵素では活性に強い物質は産生されずアガリチンの突然変異原性に影響しないと報告している。また、アガリチンが生体にどの程度影響を与えるかは今後の課題である。さらなる厚生労働省の研究に期待したい。
 これまで、色々と述べてきたが、アガリクチンは加熱することで分解して毒性のない物質に変化している。また、この物質を摂取した時にはグルタチオン、あるいはSOD(スーパー・オキサイド・ディスムターゼ)などの協力で毒性物質の生成を抑制することができるという報告もあり、アガリクスだけを摂取するのではなく、ほかの食品とも一緒に摂取することで危険性が排除出来る可能性もある。
 従って、ただ1種類の健康補助食品だけを摂り続けるのは、その効果を期待している訳で(アガリクスの場合抗腫瘍効果=j、その摂り方は医薬品%Iであり、食品的な考えからすると偏食≠ノ当たるのではないかと思うのである。このような摂り方は是非やめた方が良く、がん≠ヘキノコだけで治療できるほど単純で簡単な疾患ではないことを認識していただきたい。
 それにしても、がん患者さんのわらをもつかみたい≠サのような気持ちをもてあそぶかのような売り方で金もうけに走って来た健康補助食品販売会社の姿勢は誠に遺憾なことと日頃より苦々しく思っていた。
 このような事態が生じたのは、この種の健康食品を販売している企業が真剣な態度で、健康に関与する食品の研究に関心を払って来なかったことが最大の原因と考えており、この機会にアガリクスばかりではなくほかの健康食品を製造、販売している企業も十分に反省して欲しい。


平成18年、最新「健康産業新聞」掲載記事より引用 

Aアガリチンとはどのような物質か?

明治薬科大学客員教授 医学博士 小松靖弘

 “マッシュルーム”と日本語で呼んでいるキノコ、この学名はAgaricus bisporus(アガリクス・ビスポラス)と言うが、これは有名になっているアガリクス(Agaricus blazei)と同じ仲間である。このアガリクス属のキノコには共通して“アガリチン”という毒性物質が含まれている事が学術雑誌に報告されている。このアガリチンの毒性はそれ程強いものではなく、メルク・インデックス(化学物質の辞書様書籍)を見ても、その急性毒性についての記述はない。
 アガリチンは1960年代に発見され、化学構造式も明らかにされ、合成もされた。水に良く溶ける物質で、消化管から極めて吸収され易い物質である。どのようにしたら毒性が軽減、消失するかなど研究されている。新鮮なマッシュルームには0.1マイクログラムから0.8マイクログラム/グラム(平均すると0.45マイクログラム/グラムほど)のアガリチンが含まれると報告されている。Schulzova V.(Czech、Republic)らはマッシュルームのどこにアガリチンが含まれるかを調べたところ、傘の皮膜(上皮)とヒダの部分に多く含まれ、クキ(柄)の部分は少ないと報告している。クキの部分は菌糸体で構成されている事を考えると、培養菌糸体に含まれるアガリチンの量はかなり少ない事が推測されるが、定量して見る必要がある。アガリチンは熱、酸素などに弱く、加熱調理をする事で殆ど分解されてしまうので、料理をして食用としている限り、健康に被害を与える状況は生まれて来ないと考えられる。
 アガリクスの熱水抽出エキスの場合アガリチンは加熱分解している事が考えられ、今回の試験で突然変異原性が認められなかった商品は、もしもアガリチンが影響していたと仮定すると、加熱処理が有効に作用していたものとも考えられる。
 アガリチンは代謝も早く、Walton K(University of Surrey、UK)らの研究によると24時間以内に尿、糞中に殆どが排泄されるとしている。また、その中に含まれる代謝物は突然変異原性を示さない事も報告している。アガリチンという化合物はチッソ(N)が2分子結合した、ヒドラジン(H2N=NH2)の誘導体で蛋白質、核酸などに結合し易い性質を持っていて、この化合物の誘導体には突然変異原性がある事が知られている。アガリチンの前駆物質、あるいは代謝物である4(ハイドロキシ・メチル)フェニルヒドラジン(4MHBD)は強い突然変異原性を持っている。Shephard SE.(Swiss Federal Institute of Technology、Swiss)、Walton KらはDNA(遺伝子)との結合について研究しており、マウスに経口投与されたアガリチンは腎の組織のDNAに最も多く結合しており、肝臓、腎臓のDNAにも少ないながらも結合する事を認めている。また、Walton Kらはアガリチン自体にはそれ程強い突然変異原性を示すわけではないが、腎臓の酵素で代謝された4MHBDが突然変異原性を示す一方で、肝臓の酵素では活性に強い物質は産生されずアガリチンの突然変異原性に影響しない事を報告している。
 発がん性を調べたToth Bはアガリチンを水に溶かして、マウスに自由に飲ませた時には発がんを認めていない事を報告した。しかし、この実験ではアガリチンは水に溶かして解放系に放置すると分解するまで、この結果が正しいか否かは今後も研究が必要と思われる。発がん試験の結果は色々な実験方法、条件で異なるため、真実を理解するには困難が伴う。また、アガリチンが生体にどの程度、いかなる影響を与えるかは今後の課題である。さらなる厚生労働省の研究に期待したい。


別冊 月刊がん 「もっといい日」 -代替療法最前線-食品の抗がん効果 

B食品の抗がん効果を考える

別冊 月刊がんもっといい日

-代替療法最前線- 食品の抗がん効果

4月9日発行 1200円/消費税込・送料別途



本紙でシリーズとして連載されている 「食品の抗がん効果を考える」
こちらでは研究編・症例編にて、数々の実証された代替療法をとりあげています。今回の別冊「食品の抗がん効果」では、
その連載 2004年1月号 〜 2005年2月号までの内容をまとめた15の食品素材を31人の医師・研究者が検証。

第一章ではアガリクス・カバノアナタケ・紅豆杉・コラーゲン・ノニ・メシマコブ・ピクノジェノールなどなど食品がもたらす抗がん効果について。

第二章では、臨床医と研究者が各素材の抗がん効果について解説しています。

別冊として送る食品の抗がん効果。ぜひご購読下さい。

15の食品素材
・アガリクス
・カバノアナタケ
・紅豆杉
・高麗人参
・米ぬかアラビノキシラン誘導体
・コラーゲン
・納豆菌由来成分
・ノニ
・パン酵母
・ピクジノジェノール
・フコイダン
・マイタケ
・紫イペ
・メシマコブ
・免疫ミルク



月刊がん 「もっといい日」 シリーズ 「食品の抗がん効果を考える」 連載記事 

C食品で免疫力・抗酸化活性を高めて
がんに立ち向かう

  食品の抗がん効果を考えるL

月刊がん 「もっといい日」 シリーズ「食品の抗がん効果を考える」L

食品で免疫力・抗酸化活性を高めてがんに立ち向かう

今月号の特集2でもふれているが、がんになった人の8割以上がなんらかの健康食根を摂取しているという。とはいえ、何をどう選んだらよいかわからない、またどのくらい続けるべきのか迷うというような声も聞かれる。がんになった人は、どのような食品をどのように摂取すればよいのだろうか。漢方薬や健康食品の研究開発に長年携ってきた小松靖弘氏に伺った。

初期治療後に本当の治療が始まる。まずは免疫力を高めることから

 がんになると、健康食品をとり始める人は多い。けれども、数ある健康食品の中からいったいどれを選べばよいのだろうか。
「がんに効果的な健康食根はこれです、と明確に答えることはできません。もしそのようなものがあったとしても、健康食根は医薬品ではありませんから、人によって効果に差が出やすいものですし、体質的に合う、合わないということもあるでしょう。ただ、がんになった人は免疫力が低下する可能性が考えられます。そこで、がんと闘うためには免疫力を普通の健康人のレベルにまで上げておくことが必要です。ですから、免疫細胞を賦活するような健康食品を摂取しておくのは、よいことだと思います。」
 がんによいとされる健康食品はいろいろあるが、まずは免疫力アップに有効なものを選ぶのが基本といえそうだ。では摂取し始めるタイミングはいつがよいのだろうか。
「とくに決まりがあるわけではありませんが、一日でも一週間でも、とにかく治療が始まる前から飲み始めるのがよいと思います(ただ白血病など、血液のがんの場合は別ですが)。手術や抗がん剤にしても、放射線治療にしても、治療によって患者さんの体力はかなり奪われてしまいますから、副作用も出やすくなるんだすね。あらかじめ、免疫を賦活する健康食品などで免疫力をアップしておけば、副作用が軽減されつらい治療を乗り越えやすくなります。」
 また、初期治療が終わった後、たとえ医師から「治療ががんが消えました」などと言われても、そこで安心してまたもとの生活に戻ってはいけないと小松氏は話す。
「手術後医師から、“腫瘍は全部きれいに摘出しました”などと言われると安心して、またもとの生活に戻ってしまう人もいます。けれども、手術が成功して治ったと言われ、1、2年後に再発したという例はいくらでもあります。一度がんになった人は、がんになりやすい生活を送っていたわけですから、もとの生活に戻ってしまったら再発する危険が生まれることになります。初期治療が終わってからが、本当の治療がスタートするくらいの心構えでいたほうがよいくらいです。過剰に再発の心配をする必要はありませんが、可能であれば抗がん剤治療を続けたり、食生活を改善、健康食品の摂取など、できることはなんでもして生活習慣をあらためておくべきです。」
 人の免疫システムには自然免疫と獲得免疫の2種類がある。自然免疫は生まれたときから備わっている免疫で、切り傷や疲れ、ストレスなど日常的な不具合に立ち向かうものだ。一方、獲得免疫とはある病原体に感染して初めて得る免疫をいい、病原菌やウイルスなど命を脅かす強敵に立ち向かう。
「再発予防にはとくに自然免疫を強くしておく必要があります。自然免疫を担当するのは、NKキラー細胞やマクロファジーなどの免疫細胞なのですが、ヌードマウスを用いた実験で自然免疫系の細胞を人為的に壊すと、発がん率が上がるという結果が出ています。そのてん、キノコ系の健康食品は自然免疫を強化する作用が考えられますから、がん予防あるいは、がんを経験した人の再発予防に役立つものと考えられます」
 健康食品は薬ではないから、用法・容量はとくに決まっていない。たくさんとればとるほど効果がありそうなイメージがあるが、本当のところはどうなのだろうか。
「免疫を強化するような健康食品をとり始めると、最初のうちは免疫力が少しずつ上がっていくのですが、ある程度まで上がるとフィードバックがかかって、かえって免疫力が下がってしまうことがあります。このため、たくさん撮りすぎると逆効果になる心配があります。β-グルカンの摂取量については、人によって反応性に違いがあると考えられますし、それぞれの製品の品質的な違いなどもあります。ですから、とりあえずはパッケージに書かれている量などを参考に、自分にあった量を決めることが大切です。もし私がとるとしたら、1日1000rを超えない量にとどめるでしょう」
 また、毎日欠かさずとるよりは、適度にあいだをあけて摂取するほうが、かえって免疫力をよい状態に維持できる可能性が大きいという。
「同じ有効成分の健康食品を長期間とり続けると、体がその成分に慣れてしまい、十分な効果が得られなくなるケースがよくあるので、1年も2年も同じものを続けるより、ほかの種類の健康食品に切り替えたほうが高い効果を得られるような気がしています。たとえば一年間アガリクスを続けたら、次はメシマコブに変えてみるなど、目先を変えてみるとよいでしょう。」

活性酸素のダメージから体を守る抗酸化食品の摂取も効果的

 がんが発生するメカニズムのなかでカギとなっているのが活性酸素だ。活性酸素は細胞を変質させたり、遺伝子を攻撃したりして、突然変異を起こすだけでなく、がん細胞が増殖するメカニズムにも関与している。このため、がんの予防にも再発よぼうにも、活性酸素を消去する抗酸化物質を摂取することが必要不可欠なのだ。さらに、活性酸素はがん治療時の副作用を引き起こす原因にもなる。抗がん剤や放射線の投与、手術を受けると、がん患者の肉体には大量の活性酸素が発生する。この活性酸素が体内のさまざまな場所で悪さをすることが、副作用の一因になると考えられているのだ。
「抗がん剤治療や放射線治療の前に、あらかじめ抗酸化食品を摂っておくと、副作用を軽減できることがわかっています」
 代表的な抗酸化物質にはビタミンC・Eをはじめ、β-カロテンなどのカロチノイド類やカテキンなどのフェノール類がある。
「抗酸化物質は種類によって働く場所が異なります。それぞれ互いに協力し合いながら、体内のいたるところに発生する活性酸素と闘い、効率よく消去しているので、できるだけ多種類の抗酸化物質を摂取したいものです。野菜や果物をたっぷり食べることである程度摂取できますが、より積極的に活性酸素を消去するには、ビタミン剤やコエンザイムQ10などのサプリメントをとり入れるとよいでしょう。
 ここでは活性酸素を悪者として話していますが、一方でがん細胞を殺すとき、活性酸素を利用することもあるので、うまくバランスをとる必要があるでしょうね。」
 がんになっていろいろな努力を重ねても、結局再発してしまう人もいるだろう。
「いざ再発したと言われたら、どんな患者さんでも大きなショックを受けることでしょう。けれども、再発したらまた治療を受ければよいのです。不測の事態が起こったらすぐに治療を開始するため、いかなるときでも免疫力を高いレベルに維持しておくこと。これががんに勝つためのカギといえるでしょう」


D遺伝子栄養とがん発生のメカニズム

 食品の抗がん効果を考えるI

月刊がん 「もっといい日」 シリーズ「食品の抗がん効果を考える」I

遺伝子栄養とがん発生のメカニズム その3

がん細胞が際限なく増殖し続けるのは、細胞が自ら死ぬ「アポトーシス」というシステムが正常に働かなくなることが一因といわれる。逆にアポトーシスをうまく誘導できれば、がん細胞を死に導くことができるわけだ。最近はアポトーシスの研究が進み、遺伝子レベルでの複雑なメカニズムが解明されつつあり、フラボノイドなどの食品成分にアポトーシス誘導効果があることもわかってきた。今回はアポトーシスのメカニズムとアポトーシス誘導効果のある食品成分について、医学博士の小松靖弘博士に伺った。

アポトーシスのしくみが狂うと がん細胞は増殖し続ける

正常な細胞には寿命があるが、それ以前に異常が現われたり不要になったときには、生体の排除機能により排除されるか、自ら死ぬように仕向けられている。これを自ら死ぬ行為、「アポトーシス」という。たとえば、母親の胎内で羊水に浮かんでいる胎児は手足に水かきがあるが、それを構成している細胞は、胎児がこの世に生を受けるまでには消え去っている。また、水中で生活しているオタマジャクシには尻尾があるが、成長してカエルになると尻尾はあとかたもなく消えている。このように、不要な細胞や危険な細胞を排除して個体を成長、維持するためになくてはならない仕組みが、アポトーシスなのだ。ところが、細胞ががん化するとアポトーシスのシステムも狂ってしまい、がん細胞は増殖し続けてしまうのだ。近年、アポトーシスに関する研究は世界中で行われており、その複雑なしくみが明らかになりつつある。アポトーシスのカギを握っているのが、「P53」というがん抑制遺伝子だ。P53は遺伝子の状態を常に監視していて、異常を見つけるとすぐに修復するよう仕向ける。そして、修復がうまく行かないときは、その細胞が自殺するように指令をだすのだ。「細胞は分裂することによって増殖します。分裂には4つの段階があり、正常に進行しているかどうかは、3つのチェックポイントでP53によって監視されています。P53は異常を見つけると直ちに分裂を止め、その間に修復が行われます。修復がうまく行って異常がなくなったときは細胞分裂が再開するのですが、修復不可能なときはP53が細胞を自殺へと導くのです。」(小松博士)
一方、やたらと細胞がアポトーシスを起こさないよう、P53を抑制する因子もある。さらにその因子をブロックするものもあり、細胞分裂がきちんと行われて、必要なところで必要なときにアポトーシスが起こるよう、二重、三重以上にものぼるチェック機構が働いているのだ。
ところが、がん細胞の多くにP53の変異が認められるという。何らかの原因でP53に異変が起こると、細胞分裂をきちんとチェックすることができなくなり、誤った遺伝情報が蓄積され、がん細胞は増殖し続けてしまう。P53が異変を起こし、働かなくなることががん細胞増殖の原因になっているのなら、正常なP53を補えばよいのではないか。 そうした発想から、P53をがん組織に注入する治療法が試みられるようになった。しかし、決定的な効果は出ていない。がん抑制遺伝子はP53だけではないことや、さまざまな因子が複雑に絡み合ってがんが発生し、増殖していることが、最近の研究でようやくわかってきたところだ。

フラボノイドがアポトーシスを誘導する

食品成分にアポトーシス誘導作用を高めるものがあることが、最近の研究で次々と明らかになっている。なかでも盛んに研究が行われているのが、カテキンやイソフラボンなどのフラボノイド類だ。フラボノイドは植物に含まれる色素で、4000種類以上もあるといわれている。カテキンのなかでも、エピガロカテキンガレート(EGCG)という成分にアポトーシスを誘導する働きがあることは、すでに多くの研究で証明されており、最近ではEGCGがアポトーシスのどの過程に作用するのかを解明するための研究も行われている。米国・クリーブランド大学で行われた研究では、EGCGをがん細胞に添加したところ、カスパーゼの活性化を促す作用が確認された。カスパーゼとは、細胞中のタンパク質を壊して細胞を死へと導く酵素で、アポトーシスが起こると活性化される。P53の働きを抑制する因子をブロックして、アポトーシスを誘導する方向に働くbaxという遺伝子があるが、EGCGはbaxを活性化するという報告もある。カテキンは強力な抗酸化作用があり、遺伝子DNAの活性酸素によるダメージを抑えることが知られているが、前回触れたように、血管新生を阻害してがんの増殖を抑える作用もある。さらに、アポトーシスを誘導する働きもあって、がんの発生から増殖に至るまでのさまざまな過程で、がんを抑制する働きがあることがわかる。また、大豆に含まれるイソフラボンには血管新生を抑える働きがあるほか、イソフラボンの一種であるゲニステインに、アポトーシス誘導作用があることが確認されている。「これまでの研究報告を総合すると、フラボノイドの種類によって作用するがんの種類は異なるようです。このため、がんを予防し増殖を抑えるには、お茶や大豆はもちろん、ほかにもいろいろな野菜や果物を食べて、いろいろな種類のフラボノイドを幅広く摂取することが有効だと考えられます」(小松博士)
フラボノイド以外では、フコイダンやマイタケなど多糖体のアポトーシス誘導作用も研究されている。「試験管内での実験では、アポトーシスの誘導効果が確認されているようですが、多糖体は分子量が大きいため、摂取したときにどれだけ人体に吸収されているかについてはデータが不十分です。多糖体は免疫賦活作用が高く、免疫レベルが上がることによってNK細胞が活性化し、間接的にアポトーシスが起こっているという可能性のほうが高いかもしれません」(小松博士)

月刊がん 「もっといい日」 シリーズ「食品の抗がん効果を考える」H

 食品の抗がん効果を考えるH

遺伝子栄養とがん発生のメカニズム その2

遺伝子レベルに働きかける食品成分を積極的に摂取することによって、がんを予防し、がんの増大を抑えること可能であることが最近の研究からわかってきた。そうしたなか、「血管新生」というメカニズムに着目して、がんの成長や転移を食い止める治療法が注目されている。血管新生とはがん細胞が補給路を自らつくりだすシステムだが、これを抑えることで、がん細胞を兵糧攻めにしようという考え方だ。血管新生のメカニズムとその発生を抑制する食品成分について、医学博士の小松靖弘博士に伺った。

新しい血管をつくって成長し続けるがん細胞

がんという病気が恐ろしいのは、がん細胞が無制限に増殖して成長し、転移してほかの臓器にまでダメージを与えてしまうことだろう。では、なぜがんは成長し続け、転移するのだろうか。
 「がん細胞は一定の大きさになると新しい血管を形成します。そこで、これをがんの血管新生といい、その血管から栄養分や酸素を取り入れ、どんどん成長していくのです。また、もとの腫瘍から離脱したがん細胞が、新しい血管を通じてほかの臓器へ侵入し、新しいコロニーを作ることによって転移が起こります。」(小松博士)
 正常な細胞は、血液を通じて酸素や栄養を補給してもらい、生命活動を行っている。一方、がん細胞は際限なく成長し続けるために、独自のメカニズムを作り出した。それが血管新生というしくみだ。血管新生は女性の排卵期や妊娠したときなど、外傷が治る時に起こる現象だが、がんをはじめリウマチや糖尿病性もう膜はく離、乾癬などの疾患が進行するときにも見られるという。
 血管新生によってつくられる血管は、通常の血管とは構造が異なる。通常の血管は外膜、中膜、内膜は三層構造になっており、内膜の表面は内皮細胞で覆われている。一方、血管新生によってつくられる血管は内膜だけの薄い構造になっている。
 血管新生は、実に複雑なプロセスを経て行われるのだが、簡単にまとめると、次のようなステップに分けられる。
 @がん細胞が成長して一定の大きさになると、酸素が不足した状態に陥る。すると、血管新生促進因子が最寄の血管にシグナルを送る。
 A炎症細胞が血管新生の発生源に向かっていき、シグナルがさらに大きくなる。
 B細胞同士を結び付けているコラーゲンを壊す、酸素の分泌が促進される。
 C内皮細胞が細胞外に飛び出し、新しい毛細血管が形成される。
血管新生のメカニズムのなかで、カギとなるのがVEGF、MMP、TNF-αという3つの物質だ。

 「VEGFとは、もっとも強い血管新生促進因子で、これが血管に到達すると血管の内皮細胞の増殖が始まります。MMP(マトリックスメタルプロテアーゼ)とはタンパク質分解酵素の一種で、血管の基底膜を破壊し、細胞同士を結び付けているコラーゲン繊維を溶かしてしまう酵素です。正常な細胞はコラーゲンによってしっかり結合されていて、新しい血管ががん細胞へ進む余地などないのですが、MMPが活性化されるとコラーゲンが分解されて隙間ができてしまうのです。さらに、TNF-αは免疫反応性因子の一種で、血管新生を促進する働きがあると言われています。」(小松博士)

カテキンなど植物由来成分にも血管新生抑制効果が

血管新生のカギとなる物質の活性を抑えて、血管新生を抑制する方法が、新しいがん治療のアプローチとして注目されている。栄養補給路を断って、がん細胞を兵糧攻めにしようというのだ。VEGF、MMPをはじめとした、血管新生にかかわる因子を阻害する血管新生阻害剤の研究が、現在世界中で行われており、治療薬の開発も進行しているが、食品成分の中にも血管新生抑制作用を持つものがある。
 もっとも有名なのがサメの軟骨だ。サメなどの軟骨に、血管新生抑制作用があることは、多くの研究者によって証明されている。「ひとくちにサメ軟膏製品といっても、さまざまな商品があり、抽出法や精製方法が異なります。効果を期待するなら濃縮されていて精製度が高く、活性が証明されていて、飲みやすい商品を選ぶと良いでしょう。」(小松博士)
 最近では、血管新生抑制効果のある植物由来成分も見つかっている。そのひとつが、われわれ日本人にはなじみの深い緑茶だ。緑茶に含まれるカテキンの一種であるエピガロカテキン・ガレートという成分が、血管新生を妨げるという研究報告がある。
 スウェーデンのCao博士らの研究によると、飲料として緑茶だけを与えた4匹のマウスと、水だけを与えた4匹のマウスに、血管内皮増殖因子を用いて角膜への血管新生を誘発させたところ、緑茶を与えたマウスのグループは水を飲ませたグループより、血管増殖が35〜70%低下したという。
 緑茶を与えたマウスの血漿中のエピガロカテキン・ガレート濃度は、1日に2〜3杯の緑茶を飲んでいる人と同等たったという。また、人為的に肺がんを発生させたマウスに毎日6gのお茶を食べさせると、VEGFレベルが低く抑えられたという研究報告もある。
 米国のBagchi博士らの研究では、内皮細胞のモデルに対して、クランベリー、ブルーベリーなど6種のベリー類の混合物が、血管新生抑制効果を示したと言う。ベリー類にはアントシアニンやビタミンCが含まれているため抗酸化活性によって、活性酸素が誘導すると考えられているTNF-?の活性を抑制しているのではないかと博士らは推測している。
 このほか、大豆に豊富に含まれているダイゼンイン(イソフラボンの一種)や、タマネギに含まれるケルセチンには、MMP活性阻害作用があるとする研究報告もある。
 「私たちがふだん食べている食物のなかにも、血管新生抑制のメカニズムに関与する成分が含まれているので、これらの成分が豊富な食物をふだんの食生活に取り入れていると、がん予防にも効果的です」(小松博士)

月刊がん 「もっといい日」 シリーズ「食品の抗がん効果を考える」G

 食品の抗がん効果を考えるG

遺伝子栄養とがん発生のメカニズム その1

細胞のがん化は、細胞の中の遺伝子が異常をきたすことによって起こるため、“遺伝子の病気”とも言われる。最近の研究で、遺伝子レベルのメカニズムに働きかける食品成分を摂取することによって、病気の予防や治療が可能であることがわかってきた。この考え方を「遺伝子栄養」という。遺伝子栄養にスポットを当てるシリーズ第1回は、がん発生のメカニズム、遺伝子レベルでのがんの発生を抑える食品成分の概要について、医学博士の小松靖弘氏に伺った。

遺伝子の異常によってがんは発生する

 がんは、細胞中の遺伝子が傷つけられて正常な細胞が変異して、細胞増殖のコントロールが効かなくなって、勝手に増え続けてしまう病気だ。私達の体は、およそ60兆もの細胞からできており、各細胞の核の中には多くの遺伝子が存在する。数多い遺伝子のなかには細胞の分裂増殖(がん化)を進める「がん遺伝子」とその分裂増殖を抑制する(がん化をとめる)「抑制遺伝子」とがある。このどちらかに異常が起こると、遺伝子の情報が正確には伝えられず、細胞分裂のコントロールが効かなくなってしまう。
 がん遺伝子を傷つける原因で、大きな割合を占めるのが食事と喫煙だ。「たばこに、多くの発がん物質が入っていることは知られていますが、私達がふだん口にしている食物のなかにも、発がん物質が含まれて今ますし、また医薬品である抗がん剤のなかにも、発がん性の見られるものがあります。つまり、普通に生活しているだけで、発がん物質は私達の体に取り込まれてしまうわけです」(小松博士)
 この、発がんのメカニズムに大きく関与しているのが活性酸素だ。発がん物質は直接遺伝子に損傷を与えることもあるが、体に取り込まれた多くの物質、また発がん物質などの代謝過程で発生した活性酸素が、遺伝子を傷つけているであろうと考えられている。
 発がんのプロセスには大きく分けて、第一段階のイニシエーション(初期化)、第二段階のプロモーション(促進)があり、活性酸素はその両方にかかわっていると言われる。生活習慣病や老化現象を引き起こすと言われる活性酸素は、細胞を酸化して形態的変化を生じさせる。結果、障害を受けやすくなり、組織障害につながることが考えられる。また、その酸化反応のなかで遺伝子を直接攻撃して傷つけてしまうことがあるのだ。
 けれども、私達の体には遺伝子の修復システムが備わっていて、何らかの原因によって遺伝子が傷ついても、すばやく修復が行われる。ところが、遺伝子が絶えず傷つけられたり、修復機能が低下したりして修復が間に合わなくなると、突然変異を起こしてしまう。これが発がんの第一段階だ。
 第二段階は、突然変異を起こした細胞に、さらにがん化を促進する因子が加わることで、がん細胞が出現するステップだ。この段階にも遺伝子を傷つける活性酸素が深く関与しているという。たとえがん細胞が発生しても、私達の体には、がん細胞の成長を抑えるシステムがあるのだが、それをかいくぐってがん細胞が成長すると腫瘍が形成されてしまうわけだ。
 このように、がん細胞ができるまでには、いくつもの段階があり、それぞれに発がんを抑えるシステムが備わっている。

遺伝子レベルでがんを予防する食品成分

「たとえ遺伝子が傷つけられたとしても、遺伝子を修復し発がんを抑制する力を高めておけば、がんになるリスクを抑えることができます。遺伝子レベルのメカニズムに働きかける食品成分を摂取することによって、病気を予防したり治療したりする(遺伝子栄養という考え方が、がん予防やがん治療においても注目されています。)」(小松博士)
 まず、発がんに大きな影響を与える活性酸素のダメージを防ぐには、ビタミン類、カロチノイド、ポリフェノールなど、抗酸化物質を豊富に含む食物を積極的に摂ることが大切だ。
「最近の野菜の多くは、昔にくらべ抗酸化物質の含有量が減っているような気がしますね。太陽をいっぱいに浴びて昔ながらの方法でつくられた駿の野菜をたっぷり食べるのが理想ですが、それが無理ならサプリメントで補うことも必要です。
 遺伝子を効率よく修復するためには、遺伝子の材料となる成分を食品やサプリメントで摂取するのもよいでしょう。遺伝子は核酸という物質からできていて、核酸の豊富な食品には、サケなどの白子、子牛の胸腺、ビール酵母などがあります。」(小松博士)
 また、遺伝子が損傷を受け、細胞分裂のコントロールがきかなくなることが発がんにつながるが、ビタミンD3はこの無秩序な細胞分裂を止める働きがあることがわかっている。ビタミンD3の前駆体であるエルコ゜ステロールという成分は、天日干しのシイタケなどに含まれる。
 ところで、慢性胃炎の人が胃がんになりやすく、慢性肝炎の人が肝臓がんになりやすいことからもわかるように、がんは炎症と深いかかわりがある。
 炎症反応はCOX-1、COX-2というふたつの酵素によってつくられる、生理活性物質の関与が知られており、このうちCOX-2は炎症反応を介して、乳がんや大腸がんなどの発生にかかわっていることがわかっている。このため、COX-2の活性発現が抑制できれば、がん発生を抑えられる可能性があるわけだが、最近の研究で、お茶の成分であるエピガロカテキンが、COX-2を選択的に阻害し、がんを抑制することが明らかになっている。高麗人参にも、同様の効果が期待できるという。
 異常な細胞が生じた時の、生体の対処の方法に「アポトーシス(細胞の自己死)」というものがある。正常な細胞の寿命は遺伝子にプログラムされ、寿命が来て、不要になるとシステムを働かせて自ら消滅する。
 これを「アポトーシス(細胞の自己死)」という。ところが、がん細胞はこのシステムがうまく働かなくなり、際限なく増殖を続けてしまう。このアポトーシスを誘導する働きのある食品として、マイタケエキスなどが報告されている。
 また、細胞が増殖するには栄養が必要だが、がん細胞は際限なく増殖し続けるために、大量の栄養を必要とする。大量の栄養を取り込むために、がん細胞は自らシグナルを出し、近くの血管と自分を結ぶ新しい血管を造り出す。これを「血管新生」という。
 血管新生が起こると、がん細胞はたっぷり栄養を補給してどんどんおおきくなる。さらに、周りの組織や細胞は栄養を横取りされてしまうため、本来の機能を失ってしまう。このメカニズムを逆手に取り、血管新生を抑制することによって、がんの増大を抑える方法が、がん治療における新しいアプローチとして注目されている。
 現在、血管新生を抑制することが知られている食品にはサメ軟骨がある。このように、遺伝子レベルに働きかける食品成分を積極的に摂取することによって、がんを予防し、発生してしまったがんの増大を抑えることも、十分に可能であると考えられている

小松靖弘(こまつやすひろ)
1941年東京生まれ。獣医師。医学博士。64年東京農工大学農学部獣医学科卒業。77〜78年ニュージーランド、オークランド大学留学。細胞免疫学を学ぶ。79から85年順天堂大学医学部組織培養研究所にて抗ウィルス剤、インターフェロン誘導剤に関する研究に取り組む。84〜2000年(株)ツムラにて漢方薬の薬理研究に注力。02年から(有)サン自然薬研究所代表。東京女子医科大学東洋医学研究所、筑波大学医学系、金沢医科大学血清学教室にて非常勤講師を歴任。専門分野は免疫薬理学、アレルギー学。


月刊がん 「もっといい日」 シリーズ「食品の抗がん効果を考える」@

「免疫とキノコの密接な関係」

  食品の抗がん効果を考える@

 がんという病気のやっかいなところは、最初の治療で摘出しても、微小ながん細胞がどこかに潜んでいて何年もたってから、「再発」がんがみつかる場合があることだ。最初の治療を受けたあとは、再発予防、進行抑制に努める不断の努力がかかせない。食品には、日常の食品以外に、抗がん効果が注目される食品がある。日本では、薬品と区別するため法律上、健康食品とか機能性食品といった分類をされている。
 本シリーズでは、臨床現場で使われている健康食品を中心に、食品の効能、抗がん剤治療と併用して治療効果を高める使い方、症状の改善など、生活の質の改善に役立つ食品、など具体的な情報を提供していきたい。
免疫力という潜在的な力と食品との関係を考える第1回は、健康食品に多いキノコ類に商店をあわせて小松靖弘氏にキノコと免疫の関係を伺った。

キノコもカビも同じ真菌の仲間!?

 昔から“シイタケを食べるとガンになりにくい”などとよく言われていました。最近では様々なキノコについて、抗がん作用や免疫賦活作用が研究されています。科学的なエビデンスについても裏づけがとれてきているようです。どのキノコがいいのか、どんなものがいいのかと疑問に思ったときには、やはり臨床的にきちんととられたデータで判断したいものです。ただ、漢方薬と同様に一例報告も軽視できない。人の体というのは千差万別で、こちらの人には効いても、こちらの人には効かないということは必ずあり、数値的に同じような結果を求めても、それもまた難しい問題なのです。
 そもそもキノコとは真菌のひとつですが、真菌は大きく五つに分類されていて、担子真菌と子嚢菌、カビなどを含む不完全菌などがあります。キノコ類はすべて担子菌類に分類され、子嚢菌には冬虫花草があり、ビール酵母、パン酵母、水虫の原因となるロンジダなどのカビの仲間の種々の菌が分類されます。またお酒や味噌などを作る酵母菌類も真菌の仲間です。つまり、キノコ類もカビ類も酵母菌も水虫菌も同じ真菌類、同じ仲間なのです。
 キノコは木につく菌で、木を腐らせて土に返す役割を果たしています。生態系がうまく循環するように働いている菌ですが、結局は真菌の一種。人間の体にとってはカビや水虫菌と同様に「異物」です。
 体は、異物が入ってくると、抗体が働き、その異物を排除しようとします。このときコクロアージやリンパ球などの免疫担当細胞が活発に働き出し免疫力がいつもより強く働くわけです。キノコが異物といて体内に入ってくることによって免疫機能が活性化される。これが、キノコが体内で免疫力を高めるメカニズムなのです。
 もちろん、キノコは多種の人体に有効な成分を含んでいることが明らかにされており、少なからず体にはいい影響を与えるはずです。しかしのおそらく、キノコのよさは“どの成分がいい”というように簡単に特定されるものではないと思います。真菌類の一種であることから、体内に取り入れると身体の抗体が刺激を受けて免疫力が活性化するというのが、一番のよさになるといえるでしょう。

異物のキノコに抗体反応

 たとえば現代の医療では、発生したがんの細胞を取り出して培養し、それを利用することで、その人の免疫力を賦活させるという治療法もあります。その方法で増やしたリンパ球なら、ターゲットとなるがん細胞を知っているので、体に戻した際にも、目標であるがん細胞をピンポイントで攻めることかできます。また、T細胞などの免疫活性物質も誘導されて活動が活発になるので、効果的にがん細胞がやっつけられる。これが、いわゆる活性化自己リンパ球細胞移入によるがん治療です。
 がん細胞も真菌も体にとって異物という点では同様で、体は同じ反応を示すはずです。がんは、異型細胞の発生に起因していますから、これを防げばがんも防げるわけです。
 細胞社会学という研究分野があって、人間の体内でも細胞集団がひとつの社会を形成しているという考え方です。その集団の中で“ヘンな細胞”(異型細胞)が生じるとその集団から物理的に排除されてしまう可能性もあるのです。また人体では、明らかに異型細胞ができるとNK細胞など免疫細胞の働きにより、すぐにつぶされます。異型細胞があまり目立たない場合は、消されることなくうまく生き残ってしまいます。その結果、その異型細胞は増えて塊になり、がん細胞などに変化していく。
 がんについては、それが目に見えないところで起こっているから怖いのです。知らない間にがんは体内で育ってしまって、治療が困難になります。できるだけ早くそれを発見し、できるだけ早く対処しなければいけません。免疫学的反応によってがん細胞を殺すためにはがん細胞一個に対してリンパ球は10も20もかかります。がん細胞が少なければ少ないほど、どんな治療でも有効に働くと思います。
 私が知っている症例では、実際にキノコのエキスを飲むことで免疫機能を高めながら西洋学的治療に挑み、がんを克服した方が多くおられます。手術や抗がん剤や放射線といった治療が前提であり、これを否定はしません。ただ、キノコのエキスを飲むなどして免疫を高めて治療すれば、なおさらいいと考えています。

多種類のキノコのエキスを混合して実際に腫瘍マーカーが消滅した例も

 いくらキノコがいいといってもそんなに大量に食べられるものではありません。キノコから有効成分を抽出したエキスを飲むのがいいと思います。
 さらに、どのキノコが合うかについては、個人差があると思います。ですから私は様々なキノコのエキスを混合したものを勧めます。人間の体はそれぞれ免疫応答性に違いがあります。食べ物でも相性があるように、どのキノコが効くかも人によって違うはずです。ただ、それを調べるには時間がかかります。今すぐ的確な情報を必要としているがん患者に試行錯誤している余裕はないので、多種類のエキスを飲む。とにかく早めの対処が必要ですからね。
 実際にキノコの健康食品を飲んで、腫瘍マーカーがなくなったという人はいます。現代の医療制度で医薬品と認められているものだけしか効かないということはありません。キノコのエキスも、私はがん治療における利用価値が十分あると思います。
 術後のがん治療は犯人探しのようなもの。どこにあるか分からないものを探しだしてやっつけるということです。そうした中で、抗がん剤は無差別爆弾のような要素があります。つまり犯人以外もやられるということ。がんだけでなく体のあらゆる細胞がダメージを受けるので、体力は著しく減退し、食欲も失せます。病気に打ち勝つ前に、体がどんどん弱っていくのです。
 しかし、現在市販されているキノコのエキスを飲んでいる人の多くが、抗がん剤の副作用が緩和されるといいます。副作用が抑えられれば、それにより食欲も出るし、体力も回復できます。がんに打ち勝つための体を作る基礎ともなります。
 キノコに免疫力向上作用があるということは、様々なデータにも裏づけられている事実です。その詳細については次号で。
 より多くの人が自分に合うキノコのエキスを見つけて、自分に合った方法でがんを治療していく、あるいはがんを防いでいけれはいいと思います。


月刊がん 「もっといい日」 シリーズ「食品の抗がん効果を考える」A

「腸管粘膜は免疫細胞の砦、食べ物から免疫力を活性化する」

  食品の抗がん効果を考えるA

初発治療後、「再発」「転移」に対する2次予防の観点から、健康食品に対する関心は非常に高い。健康食品のなかには、成分がもつ薬効などの特性を特化し開発された食品があり、実際に臨床現場でも使われている。食品として分類されているため、食品の効能や、抗がん剤治療などと併用した場合の効果については、なかなか知られていない。食品として経口摂取した場合、どのような効果が現われるのか、前回に続いて小松靖弘氏に免疫活性のメカニズムについてのお話を伺った。

免疫活性は腸管粘膜で起こる

 前回は健康食品の中でも種類が多いキノコ類を取り上げました。「食べ物は人間にとって異物である」というところから、真菌の仲間であるキノコ類が抗原といて作用して、免疫細胞を活性化させるのだということを、お話しました。
 さて、食べ物は異物であるというと、およそあらゆる食べ物には免疫を高める働きがあるということになります。そこで今回は、食べ物で免疫が高まるとはどういうことか、食べ物が分解・吸収されるうえで重要な消化管からお話を始めたいと思います。
 20世紀後半に腸管(小腸)にはすばらしい機能があることがわかってきました。ひとつは口から入ってきた食べ物の刺激に対し、消化液の分泌を促すホルモンを分泌すること。このホルモンの働きで、胃腸や肝臓などの消化器官でアミノ酸やグルコース、脂肪など、吸収しやすい形に分解された食べ物は、抗原性を失って小腸で消化液と混ざり合い吸収されていきます。
 また、ヒトの腸管を押し広げるとおよそテニスコート一面分の広さがあるといわれますが、その広大な腸管粘膜の下には、実は人間の体がもっているリンパ球の60%近くがあるといわれます。とくに腸管粘膜のところどころにパイエル板と呼ばれる部分があり、リンパ球などの免疫細胞が集まっていて、さまざまな化学成分に対する受容体(レセプター)も存在しています。レセプターは食べ物の成分の一部と結びついて、免疫細胞に取り込みます。
 花びらのような形から名づけられたハナビラタケや、スーパーマーケットなどでも見かけるヤマブシタケというキノコには、大量のβ-グルカンが含まれていることが研究によって報告され、抗腫瘍活性があることも確かめられています。
 どうしてキノコ類が免疫細胞を活性化するかというと、実は、このレセプターのなかにキノコ類に多く含まれるβ-グルカンのレセプターがあるからです。キノコに含まれる?-グルカンはこのレセプターと結びつくことによって、免疫細胞を活性化させているのです。免疫細胞のレセプターは、人間が歴史的に積み重ねてきた食経験を通して遺伝的に増えてきたと推測され、β-グルカン以外にもいろいろな食べ物の成分に関連したレセプターがあり、その数は約一億個あると言われています。

食べないと免疫は低下する

 ところで、消化管には腸内細菌をはじめとする細菌が数限りなく生存しています。腸内細菌は体内で抗原を吐き散らすため、ヒトにとって一種の免疫刺激装置となっています。また、食べ物が消化・吸収され腸管内では腸内細菌も元気づきます。食べ物を食べるという当たり前の行為そのものが、人間の免疫力を高めているわけです。逆に、口から食べ物を摂取して消化管で吸収するということがなくなると、人間はどんどん体力が落ちて、免疫力も低下していきます。点滴で栄養を摂る生活が続くと、日和見感染症が起こりやすくなるのはそのためです。
 また消化管に存在するさまざまな菌の中でも大腸菌などは、リポポリサッカライド(糖脂質の一種)と呼ばれる菌体内毒素を持っています。このリポポリサッカライドには、?ーグルカンも含まれていて、抗腫瘍活性が高いことが確認されています。腸内細菌を多くもっている消化管は、いろいろな意味で免疫の要となっていると言うことができます。

多種の食べあわせでパワーアップ

 免疫を高めるのはキノコばかりではありません。漢方生薬もそのひとつです。なかでもトウキ、オオギ、ニンジン(高麗人参)などの生薬には、免疫賦活作用があることが知られています。これらを含む十全大補湯、補中益気湯、人参養栄湯などの漢方薬は補剤と呼ばれ、体の抵抗力が低下しているときに使われます。生薬には、植物に多い多糖体に由来する成分や、ステロイドのような成分、不飽和脂肪酸などが含まれており、それらが腸管に至り免疫を活性化することがわかっています。 漢方薬には、免疫賦活作用以外に気力やエネルギーを高める効果もあり、用いると食欲も出るため、結果的に免疫力が高まります。臨床現場では、がんの化学療法、放射線療法と併用し、患者のQOL改善、治療の副作用軽減などで効果を上げていることが報告されています。手術後はとくに食事もできないことがありますから食べないことだけで免疫力が低下します。そこで術前に免疫力を高める漢方薬や食品を摂ると効果的です。術後一時的に使用をやめても、免疫力は急には低下しないので、免疫力を維持できます。私は、一週間くらい前から用いることを勧めています。

多種類の食品を食べ合わせて免疫力を高めよう

 さて、健康食品には、β-グルカンを主成分にしたもの以外に、多糖体を主成分にしたもの、サメ軟骨エキスやプロポリスなどさまざまなものがあります。これらの成分が免疫細胞を活性化するのは、やはり腸管粘膜にこれらの成分をキャッチする受容体が存在するからです。健康食品は、腸管粘膜をベースにした消化吸収と免疫活性化の両面から効果を発揮するよう設計された食品であるこてがわかっていただけたでしょうか。
 現在では、各食品がもつ免疫活性力についての研究が進み、臨床結果など科学的な裏付けも出ています。β-グルカンなど有用成分の含有量を明記し、由来を明確にしているものを選ぶことです。人によって必ず向き・不向きがあり効果にも違いが出てきますから、ひとつのものに頼らず、いろいろなものを組み合わせて摂ることが必要です。
 さしあたりハナビラタケ、ヤマブシタケ、シイタケ、マイタケ、エノキタケ、シメジなとたくさんの種類のキノコをベースにしたキノコ鍋をしてみてはいかかでしょうか。最期にご飯を入れ雑炊にし、スープを全部飲めば、キノコの多糖体をタップリ摂ることができます。家庭でできる安くていしい究極の健康食品ではないかと思います。


月刊がん 「もっといい日」 シリーズ「食品の抗がん効果を考える」B

「薬事法により効能効果を表示できない健康食品、消費者のために含有量の表示を望む」

  食品の抗がん効果を考えるB

抗がん効果が高いとされる健康食品が数多く商品化され、さまざまな商品を簡単に手に入れることができる時代になった。選択の幅は広がったが、星の数ほどある商品の中から自分に合った効果の高いものを選ぶことは簡単ではない。私たちは健康食品をどう選べばよいのだろうか。漢方薬や健康食品を長年研究してきた小松靖弘氏に、健康食品を選ぶポイントや有効活用するためのコツなどを伺った。

健康食品の良し悪しを見分けるには?

がんによいとされる健康食品は数多く出回っているが、どの商品がどういう症状に、どのくらい効くのかわかりにくいと感じている人は多いだろう。日本には薬事法という法律があり、「食品」のカテゴリーに入る健康食品は「医薬品」と異なり、効能効果が証明されている場合でもそれを表示することができない。反対に、効能効果がはっきりしていないものでも商品化できてしまうため、玉石混淆となりやすいのだ。私たちは何を基準に健康食品を選べばよいのだろうか。
「健康食品は高ければよいものだと思いがちですが、価格が高くてもそれほど品質が良くないものもあれば、良心的な価格で品質が優れているものもあります。また、有名企業が販売しているからと言って、必ずしも良い商品とは限りません。一つの判断基準となるのは含有量です。アガリクスを例にとると、含有量がきちんと表示されていて、数字の高いものはよい商品だと言えるでしょう。ただし、含有量をきちんと表示している商品は少ないのが現状です」
アガリクスの場合、有効成分として?ーグルカン量が表示されていることが多い。βーグルカンとはキノコに含まれる有効成分だが、酵母にも含まれているため、ビール酵母などを含む製品では、βーグルカン量の値が高くなってしまう。
「もちろんビール酵母も栄養価の高い食品ですが、消費者は?ーグルカン量が高いとアガリクスがたくさん含まれていると勘違いしてしまいます。こういう商品は本来なら、アガリクス由来の?ーグルカン量とビール酵母由来のβーグルカン量を別々に表示すべきなのです。また『βーグルカンの吸収率がよい』と謳っている商品もありますが、?ーグルカンを経口投与してきちんと吸収率を測定した論文やデータなど、私は一度も見たことがありません」
このように、現状では商品表示などの情報から健康食品の良し悪しを見分けるのは難しいと言える。
健康食品を選ぶ判断基準として、口コミも一つの選択肢になると小松氏は言う。身近な人が実際に試してみてよかったというものから、自分に合ったものを見つけていけばよいのだ。もちろん、薬のように即効性があるわけではないから、はじめの1カ月ほどはじっくりと試す必要がある。それで以前より調子がよくなったという実感があったら続ければよいし、効果を感じられないときは別のものを試せばよい。
そのほか、少しでも不安や疑問を感じたら、直接メーカーや販売元に問い合わせることも大切だという。誠実に対応してくれないような会社はもちろん、きちんとしたデータもないのにあれに効く、これに効くと説明するような会社や、まとめ買いを強くすすめる会社も要注意だ。

多種類の食品を配合することで理想的な健康食品が生まれる

市場に出回っている健康食品を見ると、一つの食品や成分だけに特化したものが多いが、これは食品としてあるべき姿ではないと小松氏は言う。
「一つのものだけを摂り続けるのは、医薬品的な発想なんですね。私たちは毎日いろいろなものを食べてこそ健康でいられるわけで、一つの食品ばかり食べ続けたら、それは偏食ということになってしまいます。それに、私たちの体は個人差があり、どの健康食品が合うかも人によって異なります。がんの種類や状態によっても反応性は変わるでしょう。どれが一番その人に合うか、よく効くかを調べるには時間がかかるので、今すぐ確かな効き目がほしいという人は、なるべくいろいろな種類の食品が配合されたものを摂取するのが合理的ではないかと思うのです。」
このような考えから、小松氏は独自にある健康食品を試作したという。約30種類ものキノコのエキスを配合し、さらに抗がん効果を持つ成分を含有する食品を数種類加えたものだ。現在、がんで悩む知人などに試してもらっているが、よい結果が得られているという。
「子宮がんが他臓器に転移してしまい、放射線治療を受けることが決まった方に、治療開始の1カ月ほど前からこの食品を摂っていただいたところ、無事に治療を終え、今は元気に過ごしているそうです。この方は、治療前に担当の医者から副作用が強く出るかもしれないと説明されて、覚悟して治療を受けたそうですが、拍子抜けするほど副作用もなかったと喜んでおられました。がんが進行して腹膜転移まで進んでしまった人にも試していただいたのですが、その方はキノコを摂取したことで免疫力が回復したのでしょう。その後の抗がん剤治療に耐えて元気になったそうです。」

健康食品の摂取はあくまでもがん治療との併用が基本

健康食品はあくまでも食品だから、それだけでがんを治そうと考えるのはまちがいだと小松氏は言う。まれに、他に何の治療もしていないのに健康食品だけで治ってしまったという人もいるが、それはごく限られた幸運な人だけなのだ。
「クレスチンのように、キノコを原料にした抗がん剤もあるくらいですし、最近ではさまざまな健康食品の抗がん作用や免疫賦活作用が研究され、その効果が確認されたものもありますが、健康食品だけでがんが治ったという例はめったにありません。やはり、基本は抗がん剤や手術などの治療であり、治療によって低下しがちな免疫力を押し上げる目的で、あるいは抗がん剤の副作用を軽くする目的で健康食品を併用する。これがもっとも合理的で、効果が期待できる方法だと思います」


月刊がん 「もっといい日」 シリーズ「食品の抗がん効果を考える」C

「がん治療時の副作用緩和に健康食品が役立つメカニズム」

  食品の抗がん効果を考えるC

健康食品には、がん治療時に起きる副作用症状を軽減するなどの点で効果が高いものがあることは広く知られるようになっている。ところで、なぜそのような効果があらわれるのだろうか?漢方薬や健康食品の研究開発を長年手がけてきた小松靖弘氏に、がん治療時になぜ副作用は起きるのか、健康食品や漢方薬が副作用の症状緩和にどうかかわっているのかなどについて伺った。

活性酸素の大量発生が、がん治療時の副作用に関与が考えられる。

多くのがん患者が治療中またはその後に遭遇するのが副作用だ。食欲や体力の低下、吐き気、倦怠感など種々の症状ががん患者を悩ませる。これらの副作用はなぜ起こるのだろうか?抗がん剤の性格から、それらの強い殺細胞作用はよく知られる。がん細胞に特異性の高い抗がん剤が開発されてはいるが、それでも、正常細胞も殺されてしまう。
 「抗がん剤を投与したり放射線を照射したりすると、患者さんの体の中には大量の活性酸素が発生します。この活性酸素が体内のさまざまな場所で悪さをすることが、副作用の一因にもなっているのではと考えられます」
 活性酸素とは人間の体内で絶えず発生している毒性の強い物質だが、生命維持には必要不可欠でもある。生体の処理能力を超える過剰の活性酸素が体の組織や細胞を酸化して、ダメージを与えるのだ。
 食物でも薬物でも、体内に入ったものはすべて種々のルートで代謝される。体に有害、不必要な物は肝臓で解毒処理をして、尿や胆汁酸と共に、体外に排出される。この一連の代謝の過程でも、必ず活性酸素が発生する。
 「特に、抗がん剤が体内で代謝されるときには大量の活性酸素が発生すると考えられますし、放射線治療などによる細胞破壊で炎症反応が起こった部位でも、活性酸素が大量に発生します。また、抗がん剤治療によってがん細胞が壊れると、細胞の中の酵素が外に出て、まわりの正常な組織を攻撃して、それを修復するために体内の白血球が集まって炎症反応が起こるので、ここでも大量の活性酸素が発生します。
 これが、体のあちこちに障害を起こす原因の一つとなると考えられるのです。」

さまざなま成分が有効に働くことによって副作用を軽減する

がん患者に用いられる漢方薬は、「十全大補湯」や「補中益気湯」など、長期間飲み続けることで、体力増強、食欲増進をしてくれる補剤が主流だ。「漢方薬ががん治療時の副作用の軽減、患者さんの全身状態の改善を促すらしいということは、20年以上前からすでに一部の医師や研究者に知られていました。そこで、私たちの研究グループは動物実験で、十全大補湯が抗がん剤による副作用を抑制するかどうかを検証したのです。
 シスプラチンという抗がん剤は、副作用として腎臓に障害を与えるケースが多いことが知られていますが、マウスにシスプラチンを与える1時間ほど前に、十全大補湯を与えておいたところ、十全大補湯を与えなかったマウスと比較して、腎臓の障害がかなり低く抑えられたのです。ところが、シスプラチン投与の後で十全大補湯を与えても、ほとんど効果はありませんでした。これは、あらかじめ体に吸収されていた十全大補湯の成分が、抗がん剤によって発生した活性酸素を除去したり、腎臓細胞内でシスプラチンの白金と融合して障害を与えないようにしたことを示しています。それでも、十全大補湯によって、抗がん剤の作用が低下するようなことはありませんでした」

また、活性酸素ががん細胞の悪性化に関係すると言われていて、その検証のために実験が行われている。マウスの背中に悪性度の低いがんを植えつける実験で、このがんを植えつけただけでは、拒絶されるが、背中の別の部位にわざと炎症を起こしてやると、がんが悪性化し、定着した。これは、炎症を起こした部位から活性酸素が発生して、がんを悪性化させたためと考えられる。がんの悪化には活性酸素の関与が示唆される。この実験で、このがん細胞が移植されたマウスに十全大補湯を与えると悪化が抑制された。
「抗酸化作用の高い漢方薬を前もって摂っておくと、体のいたるところで有効成分が活性酸素を待ち伏せして除去してくれるのではないかと思います。もちろん、活性酸素だけですぺてが説明できるわけではありません。漢方薬は西洋医学における医薬品と違って、多くのフラボノイド化合物類、脂質類、多糖類など、実にさまざまな成分を含んでいます。その意味ではプロポリスやフランス海岸まつエキス、各種野菜の健康食品には、ビタミンE、β−カロテン、カテキン類など、さまざまな抗酸化作用を持つ物質が含まれているので、同じことが考えられます。これらの成分が体のさまざまな部分で有効に働いて、活性酸素を除去したり免疫レベルを上げたりするからこそ、漢方薬や健康食品は副作用を軽減する効果を発揮するのでしょう。」

効果やメカニズムに関するデータをきちんと提示していくことが課題

 がんの初期治療を終えた患者にとって、再発の不安は大きい。そんなとき、ふだんから抗酸化作用を持つ食品を摂取して、活性酸素を効率よく除去する態勢を整えておけば、再発のリスクを軽減することも十分可能だ。ただし、健康食品の抗腫瘍活性は不明で、そこに効果を期待するよりも、がん治療の過程で落ちてしまった体力や免疫力の回復を図ったり、抗がん剤と併用して副作用を軽減する目的で使うのが合理的だと小松氏は言う。
 健康食品のなかにがん治療による副作用を軽減するものがあるということは、広く知られるようになってきたが、効果やメカニズムが科学的に証明されているものはほとんどないのが現状だ。
「実際にすぐれた健康食品であるなら、どれだけの効果があるのか、どんな成分がどのようなメカニズムで作用しているのか、抗がん剤とどのように組み合わせれば治療効果が上がるかなど、きちんと研究をして、必要としている人にわかりやすくお知らせする必要があると思います。がんと闘っている患者さんに安心して、有効にお使いいただくためにも健康食品を売る側もしっかりしたデータをきちんと提示していくよう体制を整えていくことが今後の課題でしょう。」



サン自然薬研究所長 小松靖弘 先生

月間 「茶の間」 インタビュー記事 「アガリクスと免疫」



健康セミナー @ 自然治癒力を高め、いつまでも健康に

「アガリクスと免疫」

お話●医学博士 小松靖弘先生

「若いころより、風邪をひきやすくなったなあ・・・」 そんなこと、感じたことはありませんか?私たちの体には、病気になっても自分で治してしまう「自然治癒力」がもともと備わっています。その中心は、ばい菌やウイルスなどの感染を防ぐ「免疫」。でも、年をとるとどうしても免疫力は衰えてきてしまいます。その免疫機能を高めてくれる健康食品として話題なのがブラジル原産のキノコの一種「アガリクス」です。そのはたらきについて、免疫薬理学がご専門の小松靖弘先生にお話を伺いました。

私たちの体を守る免疫システムを元気にする

アガリクスとはブラジル原産のキノコの一種で、学名を「アガリクス・ブラゼイ・ムリル」、和名では「ヒメマツタケ」と呼ばれています。このキノコが日本で脚光を浴びるようになったのは、1980年に三重大学医学部の伊藤均先生によって、ヒメマツタケの抗腫瘍についての発表がなされてから。それ以降、国内でもさまざまな研究が進められていますが、系統だった研究はまだ始まったばかりで、有用成分や作用には未知な部分がたくさん残されています。
 アガリクスには、どんな健康によいはたらきが期待できるのでしょうか?
 私たちの体は、生体防御機構、いわゆる免疫システムによって守られています。私たちが暮らす環境の中には、ウイルスや細菌など体にとって好ましくない物質がたくさんあるのですが、それらの悪い影響をあまり受けず、病気にもならずに健康に暮らしていられるのは、このシステムのおかげなのです。
 アガリクスは、この免疫のはたらきをうまく整え、病気にかかりにくい元気な体をつくるのに役立ってくれることが期待されています。
 ご存知のように、私たちの体に細菌やウイルスのような異物が入ってくると、体はこれを敵(抗原)と見なして、その敵と対抗するための抗体を作ります。これがいわゆる抗原抗体反応です。
 それだけではありません。体の中にはマクロファージ(貧食細胞)やNK細胞(ナチュラルキラー細胞)といった免疫に役立つ細胞が何種類もあって、異物が入ってくるとそれを取りこんで、生体から排除してくれたり、サイトカインやインターロイキンといった化学物質を放出して、異物としての抗原を効率的に封じこめるはたらきをしてくれます。
 アガリクスは、こうした免疫細胞のはたらきを活発にすることによって、私たちの体を守る免疫システムを元気づけてくれているのではないかと考えられています。

生体恒常性を保ってくれる不思議なキノコの作用

 アガリクスが、なぜ私たちの免疫システムを元気にしてくれるのか。そのメカニズムについては、まだはっきりとは解明されていません。ただ、アガリクスに限らず、キノコというのは、他の野菜とは違って植物ではなく、「真菌類」に分類される微生物のかたまりです。これが食物として体内に摂りこまれると、抗原として認識されて消化管の中で抗原抗体反応を起こし、免疫システムに刺激を与えるものと考えられるのです。
 胃や腸といった消化管は、私たちの体の中の最大の免疫臓器です。ここで免疫システムを刺激することによって、そのはたらきを活発にしてくれるわけです。
 免疫力は、単に強ければよいというものではありません。免疫のはたらきが強すぎると、花粉アレルギーのように、何でもない異物に過剰反応して体に異常を来す場合もあります。アガリクスのようなキノコは、免疫システムを穏やかに刺激して、それぞれの体に見合った正常なレベルに保つようにしてくれるのです。
 このような、生体の異物排除機能というのは、昆虫でも備えている、生物にとってはなくてはならない防御機能です。これが正常にはたらくことによって初めて、私たちの体の生体恒常性(ホメオスタシス)が維持され、病気にかかりにくい、あるいは病気になっても自分で治してしまうというような、人間が本来もっている「自然治癒力」が発揮されるわけです。

年を取るとともに免疫機能は衰えていきます

 しかし、この大切な免疫システムが、今日では危機にさらされています。
 激しく変化する現代社会は、ストレスの多い社会でもあります。強すぎるストレスはそれだけで免疫機能の低下をもたらします。さらに環境汚染の影響も見逃せません。例えば大気中のオゾン層の破壊は、紫外線の増加となって私たちの体にふりかかってきます。この紫外線も、免疫力の低下をもたらす要因です。
 その他、農薬や化学物質の影響が心配される食品など、免疫力の低下をもたらす要因は枚挙にいとまがありません。
 さらに、免疫力は加齢とともに衰えていきます。年を取るとどうしても病気がちになり、「若いころに比べて風邪をひくことが多くなった」などど嘆くのも、免疫の監視機能がきかなくなっている証拠です。
 免疫機能の低下は、女性の更年期障害にも影響してくるでしょう。更年期障害の主な原因はホルモンバランスの失調ですが、人間の体というのはホルモンを分泌する内分泌系と中枢神経系、そして免疫系の三つが密接に関わって生体恒常性を維持しています。したがって年とともに免疫機能が衰え、さらに神経にストレスが加わると、閉経期のホルモン異常による諸症状がさらに重くなることも考えられます。ですから、免疫によい作用をもたらす健康食品などで、体全体のバランスを取ることが大切になってくるわけです。

多様な成分を摂ることでより幅広い免疫賦活作用が

先にあげた免疫システムのさまざまな機能は、たいへん特異的なはたらきをします。また、その免疫反応は個々人の遺伝的要因によっても異なってきます。つまり、それぞれの抗原によって、できる抗体の種類も、免疫細胞のはたらきもまったく違う場合もあります。ですから、キノコを摂る場合にも、できるだけいろいろな成分が含まれるものを摂った方が、より幅広く免疫活性を高めることになります。
 アガリクスには、地上に生えて、私たちが食用としている実の部分に当たる「子実体」と、地下の根っこの部分にあたる「菌糸体」があります。例えば子実体であれば胞子に含まれる成分があるなど、子実体と菌糸体には、それぞれに含有する有用成分の種類が違います。
 その点では、アガリクスの製品を選ぶとき、子実体のエキスと菌糸体のエキスをそれぞれ配合した製品なども、多様性のある有用成分を摂取できるという点で、よいのではないかと思います。

科学的根拠のある製品を選びましょう

 アガリクスの健康作用についてはさまざまなことがいわれていますが、最初にも触れたように本格的な研究は始まったばかり。まだまだ未知な部分が多いのが現状です。よく新聞や折込チラシなどで「アガリクスで××が治った」といった大仰な広告を見かけますが、あまり誇大な宣伝文句に惑わされず、しっかりと科学的な視点から判断して製品を選ばれることをおすすめします。
 高麗ニンジンなど生薬の多くは、産地によって成分も作用もまったく違うものもあります。アガリクスも同じで、産地や栽培法、抽出方法などによって含まれる成分や作用が大きく異なることも少なくありません。ですから実験データなども、メーカーが責任をもって、自社製品を使って実験した結果でなければ、あまり信用することはできません。
 最近、医療の世界ではEBM(エビデンス・ベースド・メディスン)ということがよくいわれます。つまり、きちんとしたエビデンス(科学的根拠)に基づく医療が求められているわけです。同じように、健康食品にも、しっかりとした科学的な根拠が求められる時代です。
 成分表示はもちろん、きちんと自社内で実験研究を行ない、科学的な根拠をしっかりもって製造・販売を行っているような信頼のおけるメーカーの製品を選ばれることをおすすめします。

自然治癒力を高め高齢化時代を元気に生き抜く

 アガリクスは健康食品ですので、基本的にはどんな人が摂ってもかまいません。そこで、先にも述べたように、アガリクスは年とともに衰えてくる体の免疫システムを活性化してくれるはたらきがあるため、特にお年寄りの方にはよいのではないか、と考えています。
 寒さが厳しくなるこれからの季節、免疫力が低下してくると風邪もひきやすくなります。ひと冬アガリクスを試してみて、「そういえば、今年の冬は風邪をひかなかったな」というようなことになったら、アガリクスが免疫機能を高めるはたらきをしてくれたからかもしれません。
 薬ではありませんので、体によい作用があるかどうかは人それぞれです。まず自分で試してみて、体に合っていると思えば長期にわたって使用されるとよいでしょう。
 これからは、健康は自分で守ることが大切。生活習慣病を防ぎ、健康を保つには、まずバランスの取れた食生活と、生活習慣を整えることが重要です。それでも足りない場合には、アガリクスのような健康食品を使ってみるのがよいでしょう。これからの高齢化社会、寝たきりにならないで元気にすごすために、健康食品に対する科学的な知識をしっかりもって、上手に役立ててもらいたいですね。

続く


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