胃がん

   

特徴

早期では、自覚症状はなし。
進行性胃がんでは、食欲不振、悪心、体重減少、腹水、腫瘤触知、空腹時の痛み、胸やけなどの潰瘍症状を訴えることもある。

似ている病気

早期胃がんでは、びらんや潰瘍、胃ポリープ、胃粘膜下腫瘍など

進行性胃がんでは、重度の胃潰瘍(巨大潰瘍)など

合併症

嘔吐、出血(吐血、下血、貧血)など、

他の臓器に転移または浸潤した場合は、腸閉塞、黄疸、呼吸困難、腰痛などが起こる。

胃がんとは?

 胃がんは胃の粘膜上皮から生ずる悪性の新生物です。
 日本人に最も多いがんが、胃がんで、全体の約50%を占めるといわれている。
 ひと昔前までは、不治の病と言われていましたが、近年では、診断法、手術法のなどの進歩によって治癒率は著しく向上している。

胃がん手術の5年生存率は、がんの進行度(ステージ)によって差異がある。

ステージTは約95%、
ステージUは約72%、
ステージVは約43%、
ステージWは約13%、

となっている。

胃がんの生存率の向上は、ステージTやU、すなわち早期発見例の増加による。

胃がんの発病の男女比は、
18:10で男性に多く、年齢は40歳から増加しはじめ、60歳代から急増する。

どうして胃がんになるのか?

 胃がんの原因は不明。
 疫学的には東北、北陸地方などに発病者が多い。
 漬物や塩魚が原因であるとする説
 若いときからの喫煙が原因とする説
 胃潰瘍(胃・十二指腸潰瘍など)から胃がんになるという説
 ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が関与しているという説

 など、いろいろな説がある。

発現

 早期がんはがんの浸潤の深さが粘膜層または粘膜下層にとどまるもの
 粘膜がんではリンパ節への転移は低い。

 肉眼的には、

 隆起型(T)
 表面隆起型(Ua)
 表面平坦型(Ub)
 表面陥凹型(Uc)
 陥凹型(V)

に分けられる。

実際にはUa+Uc や Uc+V などの混合型の場合が多い。

進行がんの肉眼分類は、ボールマン分類が用いられる。

隆起型(1)
潰瘍形成型(2)
潰瘍浸潤型(3)
浸潤型(4)
分類不能(5)

の5つに分けられる。

がんの診断には、X線検査、内視鏡検査、内視鏡下生検などが不可欠。
電子内視鏡や色素内視鏡検査は微小がんの発見に有効。
がんの進行度診断は超音波内視鏡検査でかなり正確に診断できる。

胃がんを治すには?

胃がんと診断されたら、
@リンパ節郭清術を含めた胃の切除手術を行うのが原則。
A発生部位や進行度によっては、胃全摘除や他臓器の合併切除をする。

高齢者に対しては手術は慎重に行う必要がある。
75歳以上のケースでも術前術後の管理を完璧に行えば胃全摘手術も可能。
80歳以上では、低栄養、換気障害、心機能障害などの様子を十分に検討し、その改善を図った上で手術に臨む。

また、手術が不可能な患者さんの場合は、非手術的治療が行われる。

胃がんが早期に発見された場合、とくに一センチ以下のUa(表面隆起型)やUc(表面陥凹型)の早期胃がんでは、リンパ節への転移率はほとんどゼロであり、局所だけの治療、すなわちがん病巣に対する内視鏡治療で根治が期待できる。

こうした症例では、局所切除のみで根治が可能。

進行がんに対しては、麻酔法や術前術後の管理法の進歩により、転移巣や浸潤巣までの合併切除を含めた拡大手術が積極的に行われる。
進行がんの手術に際しては、手術後のがん細胞の残存や転移、腹膜播種などの可能性を考慮して、手術中、術後に強力な抗がん剤や免疫賦活剤が投与される。

また、手術後も定期的に検査が続けられ、がんが再発した場合、比較的早期に発見されれば、再手術も可能。

胃がんに気づいたらどうするべきか?

家族や親戚にがんになった人がいる場合は、定期検診を積極的に受ける。
定期検診で異常が指摘されたら良性・悪性の結論が得られるまで徹底して精密検査を受ける。
悪性が疑われた場合は、定期的な経過観察が必要。

胃がんと診断されたら信頼できる病院で手術を受ける。
高齢の方や重症の合併症を併発している人に対しては、手術ではなく内視鏡治療が考慮される。
切除不能の場合や再発した末期がんでは、出血、狭窄などの合併症や疼痛で悩まされることが多いため、内視鏡的止血法、内視鏡的狭窄解除術、ペインクリニックなどを活用して患者のクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)の向上を図るしかない。



肺がん

肺がんは、悪性であることが多い。
肺がんの原因は明らかになっていない。

肺がんは高齢者の男性に多い。
非喫煙者に比較すると喫煙者に肺がんは多い。

*「ブリンクマン指数」
一日平均喫煙本数(例えば20本)に、喫煙を続けた年数(例えば20歳から60歳まで40年)を、乗じた指数、
例えば、上記例では、20×40=800、が400を超えると肺がんが出現しやすい。

喫煙の煙の中に、発がん性化合物があると推測されている。
アスベストのように吸入を続けると明らかにがんが多発する物質もあるので注意。

しかし、喫煙指数が1000を超えても長寿の人がたくさんおり、アスベストが肺内に入っても100%発がんするとは限らない。
発がんの機構はまだまだ不明である。

肺がんの種類と症状

肺がんは四種類ほどのがんで大部分を占める。
扁平上皮がんと腺がんが、それぞれ約40%で、合計80パーセント。
大細胞がん、小細胞がんが20%。

扁平上皮がんとは?

扁平上皮がんは気管から気管支の内部をおおっている扁平上皮という細胞ががん化したもの。
初期には気管支内腔の表面に限局して出現する。
レントゲン写真では陰影として写る。
この段階で、気管支の粘膜を破壊し、わずかな血痰として気づくこともある。

次第に発育して気管支の外壁を破壊すると、気管支外壁の周辺にがん細胞の塊が出現し、レントゲン写真で陰影としてみられる。
肺には血管がたくさんあるので気管支壁の外へ発育しはじめると血行に乗ってほかの臓器やリンパ節へ転移する。

扁平上皮がんは、レントゲン写真でわかるようになる前の段階で、発見し、切除すれば、100%治癒する(たすかる。)

扁平上皮がんは喫煙指数の高い人に多発し、初期でも痰の中にがん細胞が出ていく。
高齢の喫煙者の痰の細胞検査をすれば、初期に発見できる。

扁平上皮がん細胞は、限局的な性質をもっていて、転移もゆっくりで、放射線や制がん剤に対してもよく反応する。
手術や放射線治療、制がん剤などによる治療が有効である。

腺がん

腺がんは、肺組織に多数ある分泌腺組織の細胞ががん化したもので、肺の末梢組織(肺胞などより構成)に囲まれて出現するため、初期からレントゲン写真に写ります。

初期の腺がんは無症状ですが、検診のレントゲン写真で発見される。
早期腺がんは、直径1cm以下の周辺がややぼけた、淡い陰影を示す。
腺がんが成長して直径が2〜3cmになると、濃度の高い、周辺に不正な凹凸をもつ、周辺の血管が集中した、肺の外側表面に近いところの、胸膜が引き込まれた形を示す。

腺がんの特色

血行転移が早くから起こる。(レントゲン写真で腺がんらしい形を示す段階では、多くは骨、脳、肝臓などに転移している)
腺がんの場合は、レントゲン写真で直径1センチ以下で、転移していない段階で発見しなければならない。
早期発見で切除すれば、100%治癒が可能。
腺がんは、喫煙指数とは関係なく、若い女性などにも多数出現するがんである。
集団検診のレントゲン写真撮影やその他のチャンスを利用した肺のレントゲン写真によって、ごく早期の無症状のものを発見切除することが一番大切である。

腺がん細胞は転移が速い。
放射線や制がん剤に抵抗する、。
早期手術が一番決め手になる。

大細胞がん

大細胞がんは腺がんに類似した大型の細胞によってできている。
腺がんよりも悪性度が高い。
成長や転移が速いため発見されたときは、直径4〜5cmに達して、脳転移や骨転移がみられることが多い。

小細胞がん

小細胞がんは肺がんの約10%を占め、四種類の肺がんのなかでは、最も悪性度の高いがんである。
小細胞がんの細胞は核の大きい小型細胞で、肺の中心部(左右肺の入口に近い部分=肺門部)の気管支粘膜の下層に出現することが多く、初期には粘膜下で発育するので、レントゲン写真には写らない。
このため、ごく初期のものを痰の検診から見つけ出すことが難しい。
悪性度が高く、成長が速い。
気管支外壁を破壊、周辺組織を破壊しながら成長、拡大して、リンパ節への転移や血行性にほかの臓器への転移が急速に進む。
小細胞がんは、痛みとか、リンパ節の腫瘤に気づいて発見されるが、手術して切除することは、ほとんど不可能。治療不可。
小細胞がんは男性に多く、悪性で進行が速いため、放置すれば数カ月で死亡する。
しかし小細胞がんは、放射線や制がん剤に比較的よく反応するため手術よりも制がん剤や放射線による治療が優先して行われる。

診断

肺がんはその細胞の種類によって病気の特徴が異なるので、それぞれに応じて診断法がある。
レントゲン写真による検査が基本となるが、扁平上皮がんは、初期から痰や血痰への注意が大切で、疑わしいときには専門医による気管支鏡検査を受ける必要がある。
小細胞がんも肺の中心部の気管支から発生することがあるため、気管支鏡検査で診断がつけられることがある。
腺がんや大細胞がんは検診で胸部レントゲン写真を撮ることが大切。
初期の場合は気管支鏡検査でも診断がつかないので、思い切って開胸手術に踏み切ることもある。
肺がんが進行した場合には、CT検査でリンパ節転移や脳、肝転移などを検査し、腫瘍に集まりやすい核物質を利用した「腫瘍シンチグラム」検査を行う。
がんが進行すると、声がかれたり、顔面などに浮腫が出現したり、胸膜炎を伴ったり、脳転移による頭痛、骨転移による神経痛、あるいは骨折がおこることもあるので注意。



肝臓がん

肝臓がんの症状

上腹部痛、腹部膨満感、食欲不振、黄疸、体重減少

肝臓がんに似ている病気

肝硬変、肝嚢胞、胆石症、慢性胃腸炎、胃・十二指腸潰瘍

合併症

腹水

転移性肝臓がん

肝臓以外の臓器のがんが肝臓へ転移してできるがんで、続発性肝がんとも呼ばれる。
肝臓は、がんの転移によって大きくなる。いろいろな臓器のがんが肝臓へ転移する。

高齢者に多く、男女ともほぼ同じ比率。

発病

肝臓は胃、腸、膵臓、胆嚢などの臓器に接しているため、これらの臓器のがんが肝臓へ転移する。
また、肝臓と離れたところにある臓器のがんも血流性に転移する。
肺がん、乳がん、卵巣がんなどは肝臓へ転移することの多い。
肝臓への転移は、血管を介しておこり、ときには、リンパ管を介したり、直接浸潤することによって、転移することもある。

転移性肝臓がんも原発性肝臓がんも症状はあまり変わらない。
肝臓が大きくなるため、上腹部が痛み、腹部が張ったりする。
食欲がなくなったり、体重が減ったりする。
元の臓器のがんの症状のため、転移による症状がはっきりしない場合もある。
逆に肝臓へ転移してはじめて症状が現れることもある。

治療

転移性肝がんでは、元の臓器のがんの性質や状態によって治療法が異なる。

対処法は、原発性肝がんとほぼ同じ。
転移性肝がんは、肝障害や輸血の有無とはあまり関係ない。



膵臓がん

症状

上腹部の痛み、不快感、黄疸、食欲不振、体重減少、糖尿病の悪化など

膵臓がんに似ている病気

慢性膵炎、閉塞性黄疸、内分泌・代謝性疾患、糖尿病の悪化時

合併症

閉塞性黄疸、膵嚢胞、膵炎、糖尿病

発病

原因は不明。
家族性膵炎の家系の人や、膵石症や膵嚢胞性疾患などのある人には、がんがおこりやすい。
膵臓がん特有の症状はありません。最も多いのは上腹部の不快感、痛みです。上腹部の痛みに黄疸、体重減少、一年以内の糖尿病の発生または悪化ががん発見のきっかけになります。腹部超音波などによる検診で、偶然膵腫瘤を発見することもあります。

治療

黄疸が強い場合は、胆管ドレナージを行い、根治手術の可能性があればがんを切除。
一般に、膵がんの予後は良くない。
2cm以下の小さな膵臓がんであれば予後はよい。

すい臓がんに気づいたら?

専門医に相談する。



食道がん

症状

食物のつかえ感、食べるとしみる、食物を飲み込むときに痛むなど

食道がんに症状がよく似ている病気

食道炎、食道神経症、食道アカラシア、食道良性腫瘍

合併症

がんの転移

食道がんとは?

食道の粘膜上皮や粘液腺上皮から発生する悪性腫瘍で、頻度の高い食道の病気の一つ。
35歳くらいから発病するが、50歳以上の患者が約9割を占め、なかでも60歳代に最も多くみられる病気。
しかし最近は40歳〜50歳代の発生頻度が増えてきている。
また、性別では男性に圧倒的に多い(男7:女1の割合)
発生部位では食道の中部、下部が多く、次いで上部、頸部の順にみられる。

食道がんを、さらに専門的に分類すると、扁平上皮がんが約92%、粘液腺上皮由来の腺がん、
類腺がんが約7%、未分化がんおよびその他が1%。

発病

外国では、飲料水やビタミンAの不足などと疫学的に因果関係が証明されている地域もある。
我が国では、原因は不明。
しかし飲酒歴や喫煙歴と相関関係があり、25〜30年以上の長年多量の飲酒歴(毎日日本酒3合以上)のある人に多い傾向があります。

発現

食べ物が飲み込めない、食べ物を飲み込むときに痛い、胸骨後部の痛みやしみる感じ、胸やけ、げっぷ、嘔吐、吐血、体重の減少、心窩部痛、背部痛、声がれなど。
大部分はかなり進行するまで無症状である。
嚥下困難で発見されることが多い。(検診のとき偶然発見された初期食道がんの約30〜40%は無症状)

診断方法

X線バリウム検査、内視鏡検査。
初期の表在がんの発見には、内視鏡検査が有用。
生検組織診断で最終的に診断する。
レントゲンで発見される食道がんのほとんどは進行がんである。
早期発見には内視鏡検査が不可欠。

治療

進行した食道がんの治療は、外科療法、放射線療法、化学療法などがある。
食道がんは、進行すると離れた頚部や腹部のリンパ節に転移するので、がんとリンパ節を同時に摘出する外科治療が有効。
手術後の予後を良くするためには、放射線治療や化学療法を組み合わせて行う場合もある。
初期に発見された食道粘膜がんに対しては、内視鏡的に切除する治療法も確立され、完全治癒するケースもある。

きわめて初期の食道粘膜がんの場合は、内視鏡下にがん部粘膜を切除するEMR(endoscopic mucosal resection)法で、
5年生存率は100%に近い。

食道がんに気づいたら、

進行した食道がんは、放置すれば1〜2年でほとんどが死亡する。
予後不良の病気。
早期発見で適切な治療を受ければ、70〜80%の人が完全治癒する。

食道の症状がみられたら、気のせいにしたり、やわらかい食べ物やお酒などでごまかしたりしないで、
すぐに、消化器の専門医を訪れ、内視鏡検査を受けることが大切。
飲酒歴のある方は、40歳を過ぎたら年に1〜2回の内視鏡検査を受けること。



大腸がん

大腸がんの症状

@下血(肛門出血、血液が便に附着、便潜血テスト陽性)、
A排便習慣の変化(便秘または下痢気味になったり、あるいは両方)、
B腹痛、貧血、体重減少を伴った全身倦怠感、
C不定腹部症状(膨満感、重圧感、腹鳴、不定の鈍痛)、
まれに原因不明の微熱

大腸がんとよく似ている病気

良性ポリープ、ポリポーシス、カルチノイド腫瘍、粘膜下腫瘍(筋腫、脂肪腫、悪性リンパ腫、肉腫)、大腸憩室、潰瘍性大腸炎、クローン病、アフタ性大腸炎、薬剤性大腸炎、直腸粘膜脱症候群

合併症

鉄欠乏性貧血、腸閉塞、穿孔、瘻孔形成、尿異常(血尿、頻尿、排尿困難)、肝臓や肺転移による合併症、二次的感染症

大腸がんとは、

盲腸から結腸(上行、横行、下行、S状)、直腸までの大腸粘膜上皮から発生するがん。
進行すると腹膜、膀胱、子宮、肝臓、肺などへ転移する悪性腫瘍。
発育、進展は遅い。

大腸がんの発生頻度は、西ヨーロッパ、北アメリカが最も高く、アジア、アフリカ、南アメリカが最も低い傾向にある。
近年、日本では徐々に増加しており、とくに結腸がんの増加が著しい。
高脂肪・低繊維食の欧米型生活が関与。
年齢は60歳代をピークに高齢者に多く、性別では男性にやや多い。
女性の結腸がんが増加傾向にある。
発生部位は直腸がんが50〜60%、次がS状結腸がんで20〜30%、下部大腸に非常にできやすく、70パーセント以上を占める。

早期がんと進行がんに分けることができる。
早期がんはほとんどがポリープ状に隆起した型態をとる。
進行がんは中心に噴火口状の潰瘍とそのまわりに外輪山状の周堤隆起を伴った限局性潰瘍型を呈している。
大腸がんは、大腸のほかの部位に、同時にあるいは異時性に多発する傾向にあり、また腺腫を合併することが多い。

発病

大腸ポリープのほとんどは、組織学的に腺腫と呼ばれるが、この腺腫からがんになるという説が有力。
腺腫ががん化する代表的な病気が、遺伝性の家族性大腸腺腫症。
腺腫を経由しないで正常粘膜から直接がんが発生する場合もある。

現在では、大腸がんの発がん、進展、転移については遺伝子レベルの解析が急速に進んでいる。
すべての早期がんが進行がんに進んでいくとは限らないが、茎をもったポリープ状の隆起ではなくて、無茎性の扁平な隆起をした腺腫あるいは早期がんが、進行がんになりやすい。

潰瘍性大腸炎のような炎症が長く続くと、がん化あるいはがんを合併する危険がある。
炎症が全大腸にわたっている場合と経過年数が10年以上たった場合には、その危険率が高くなる。

症状は、がんの大きさや進行の程度、発生部位によって異なる。
症状は、下血と便通異常、腹痛。

下血には顕出血と潜出血がある。
前者は、目に見える新鮮血から赤黒色の出血で、糞便に附着していたり、血液だけを排便前後に排出したり、ふき紙に付着した血液に気づく。
このようなことは直腸からS状結腸にがんがあるときに多くみられる。

目に見えなくて潜血テストによって検出する出血を潜出血という。
右側結腸にがんがあったり、早期がんのときは潜出血のことが多い。
貧血(鉄欠乏性)をおこしてから気づいたり潜血テスト陽性でよく発見される。

排便習慣の変化である便通異常は重要な症状で、いつもとちがって便秘や下痢がちの排便が少し長く続くときは注意が必要。
腹痛は痛みの場所や程度が定まらない鈍痛や、腹部膨満感や重圧感、腹鳴だけの不定腹部症状だけのこともある。

早期がんが、直腸からS状結腸の下部大腸にあるときには、少量の下血でがんに気づくことがあるが、ほとんどの場合は症状はない。

治療

外科的に開腹してがん部を切除する方法が基本。
早期がん(粘膜固有層に限局したがん)であれば、内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)、あるいは粘膜切除術で完全治癒する。

がんが転移していると根治療法は困難。
放射線治療や化学療法、免疫療法などの補助的合併療法を行い、治療効果を上げる努力が必要。
高齢者や心肺機能低下などのため開腹手術ができない患者の場合は、レーザーやヒータープローブを使って焼灼(がん組織を焼いて破壊する)する治療法が採られることもある。

大腸がんに気づいたらどうする

大腸腺腫が大腸がんの前がん状態であることがはっきりしているため、腺腫の段階で内視鏡的ポリペクトミー、あるいは粘膜切除術で切除しておくことが重要。
腺腫にしても早期がんにしてもポリープ状をしており、内視鏡検査で見ただけではほとんど区別がつかない。したがって、大腸ポリープは診断と治療をかねて高周波で切除を受けておくことが必要。

腺腫や早期がんの早期発見のためには、症状が出ないので、腺腫やがんが増加しはじめる40歳代になったら、便潜血テストでこれらの疾患のスクリーニングを受けておくことが大切。
便通異常や不定腹部症状に気づいたらバリウムを使った注腸X線検査や大腸内視鏡検査を受けること。

新鮮血の下血(ポタポタ落ちたり、便器に散ったり)に気づいたときに、よく「痔が悪い」と考えて放置する場合が多いが、
痔核と診断するためには下血が、直腸がんやS状結腸がん、その他の炎症性疾患によるものではないことを専門医から確認しておくことが大切。


以上、言うまでもなく、がんは現在でも死に密接する病気です。みなさん十分注意してください。


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