皮膚に関する症状と漢方薬について

   


@湿疹および皮膚炎

湿疹および皮膚炎は、普通一般に起こる、最もありふれた皮膚病でアレルギーの代表的な皮膚病である。
湿疹や皮膚炎は皮疹の形態学的体系に基づく大まかな臨床的概念による診断名である。
その中で誘因(接触原)が主たるものを皮膚炎といい、
素因(湿疹準備状態)を主として発病するものを湿疹という。
したがって、原因=接触原(外因)の明らかなものを「〜皮膚炎」と呼び、原因の不明なものを一般に湿疹と呼ぶ。

湿疹および皮膚炎の治療は、西洋医学では主として局所の軟膏治療が主である。
漢方医学では局所の「証」による漢方薬による内服治療が行われている。

皮疹の状態(局所の証)に応じて調合する基本的な漢方処方は、
湿疹が傷寒系の皮膚病であり、皮疹の進行が発病から終焉まで傷寒と同じ経過をたどるため、
傷寒と同じような弁証論治により決定する。
ただし湿疹と傷寒とでは、炎症のある部位、病因、病理が異なるため、『傷寒論』に示された傷寒の弁証法および治療方剤がそのまま湿疹の局所の証の弁証や治療に適合するとは限らない。
ゆえに実際の治療にあたっては局所の証の寒熱、虚実、燥湿および病位などを弁別し、それぞれの証に適した漢方処方を選ばねばならない。
また漢方では全身の病的反応(全体の証)をつかみ、全身の調和をはかって調合する。
熱感、口渇、浮腫、不眠、生理の変調、大小便の変化などの全身症状。
舌の状態などによる証の把握で、個々の病症パターンを弁証して、随証治療をする。

たとえば、炎症の強い紅斑にびらんと結痂のある急性湿疹がある。
この急性湿疹は、漢方による弁証では、傷寒系皮膚病、陽明病形湿疹と弁証される。
そして局所の証は勢熱狭湿証である。ゆえに傷寒の陽明病気に使われる方剤で、清熱○湿剤としては茵ちん五苓散、
清熱瀉火剤としては白虎湯、竜胆瀉肝湯、
清熱解毒剤としては黄連解毒湯、
清熱止痒剤として消風散の方剤が調合候補として挙げられる。
ゆえにこれらの数種の方剤により最も適切な治療方剤による治療を行えばよい。



Aアトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、体質(アトピー素因)の関与する特殊な皮膚炎で特徴のある病像をあらわす。

アトピー性体質には、以下のようなものが挙げられる。

@家族に気管支喘息、枯草熱、アトビー性皮膚炎など一連のアレルギー性疾患がある
A食餌性ないし吸入性抗原に対する皮内反応で、即時型の反応が出る。
B好酸球の増多、IgE抗体の出現率が高い。
C寒冷、温熱、湿度、乾燥、感情などのストレスに対し、異常反応を起こしやすい。
D薬剤の過敏性が高い。

以上のような体質素因を基礎として、湿疹および皮膚炎とは皮膚症状や経過の異なる特殊な皮膚炎がアトピー性皮膚炎である。

アトピー性皮膚炎は、「乳児湿潤性湿疹」の病像で始まる。
急性期の治療に抵抗し、次第に慢性化し、皮疹は好んで肘、膝膕(膝の裏側)などに限局した苔癬化局面を呈する(小児アトピー性皮膚炎)
顔面、頚部およびからだ幹、四肢にわたる乾燥性の病像「幼児期乾燥性湿疹」をあらわす。
この間、一時湿潤化した病像もみられる。
年長になるにつれて乾燥性で、苔癬化の強い成人期のアトピー性皮膚炎に移行する。

成人期のアトピー性皮膚炎の特徴は、
顔面、頚部に紅班の強い顔面紅皮症様の皮疹。
手掌より指に及ぶ亀裂を伴った手掌湿疹。
このような症状を示す者は、種々の西洋医学的治療に抵抗を示し壮年期の40〜50歳まで続くが、加齢による免疫機能の低下とともに自然に治癒する場合も多い。

喘息を伴った症例では、アトピー性皮膚炎が悪化すると喘息の症状が鎮静し、
喘息症状の悪化によりアトピーの症状が鎮静するという現像がみられる。

アトピー性皮膚炎の悪化に伴い白内障や網膜剥離などの眼症状が表れたり、難治性の脱毛症を併発することもある。

アトピー性皮膚炎の治療は、
@アトピーを起こす体質(アトピー素因)についての体質改善
A特殊な皮膚症状の改善

@は、ドライスキンに対する治療が主であり、Aは局所の証に対する治療である。

アトピー性皮膚炎の局所の証は年齢、寒温、日光、物理化学的な刺激、生理の状態により変化し、
遷延して痒みが続くため、引っ掻くことによって皮膚のバリアを破壊し、
そのため痒みを誘発する物質や炎症誘発物質を遊離し、
それに伴う皮膚症状の悪化、痒みの増強という、悪循環が、より局所の証の治療を困難にする。

まずアトピー素因であるドライスキンについての体質改善、スキンケアについて、
漢方では、皮毛は衛気と津液により温養され潤される。
肺は気を主り衛に属し、衛気を宣発し精を皮膚に送り皮膚の栄養を高める。
つまり、皮膚が水分を失って乾燥したドライスキンに湿潤性を保持させ栄養を高める。

アトピーのスキンケア改善剤として、補気剤や気血双補剤を用いる。
補気剤には主として四君子湯、六君子湯、補中益気湯、黄耆建中湯、
気血双補剤には十全大補湯、人参養栄湯などを使用する。
そのほか、四物湯、六味丸、八味丸などの補血、補陰剤を用いて、体質改善と皮膚に湿潤性を保たせる(スキンケア)。

アトピー性皮膚炎の局所の証の治療(局所の証についての漢方処方の選択)
アトピー性皮膚炎の経過パターンと皮疹の形を、西洋医学で分類されているものと対比し、それぞれの病形と症状に準じた漢方薬を調合する。
しかし実際には、特殊な病形もあり、西洋医学でも顔面紅皮症形、屈側形、痒疹形、貨幣形などに分類して治療法を考える向きもある。
漢方でも局所の証の重症度、形態の変化などを考慮して、それぞれの病症に適した漢方処方ならびに加減方を選ぶ必要がある。

現在湿疹および皮膚炎、アトピー性皮膚炎に最も有効な外用剤として用いられているのはステロイド外用剤である。
しかし、ステロイド剤の使い方の誤りや、長期使用による副作用に悩まされ、ステロイド拒否症の人が多くなってきている。
したがってステロイド剤に代わる軟膏の必要性が要求され、漢方の軟膏剤も頻繁に用いられている。



Bせつと癰

せつおよび癰は化膿球菌による皮膚疾患。
せつは1個の毛包を中心とした周辺組織の炎症であり、癰は数個の毛包に生じた炎症である。
せつ・癰ともに軽重さまざまな疼痛、悪寒・発熱があり、倦怠感、所属リンパ腺の腫脹、白血球の増多がみられる。
青壮年に多く発病し、頚背部に好発する。
治療は抗生物質や消炎酵素の全身投与と局所塗布が行われる。
成熟時にはスピール膏の貼布や切開排膿をする。

漢方で、せつと癰は、湿疹や皮膚炎とともに傷寒系の代表的皮膚病である。

弁証論治は湿疹および皮膚炎に準じて行う。
湿疹や皮膚炎とは病因(病邪)が異なる。
症状が強く、悪寒・発熱を伴って始まる。
湿疹、皮膚炎が皮膚病の「中風」とすれば、せつと癰は皮膚病の「傷寒」である。

つまり、全く、傷寒の発病初期(太陽病)と同じような全身症状を伴って発病するため、『傷寒論』に示された弁証と論治による漢方処方が応用できる。

発病初期では麻黄湯や葛根湯などの発表剤。
病状が進み炎症症状が強くなり、発熱、疼痛、腫脹が激しくなると、清熱解毒、清熱瀉火、清熱涼血剤を使用。
清熱解毒には柴胡と黄今を主薬とする柴今剤や黄蓮と黄今を主薬とする今蓮剤を使用。
清熱瀉火には石膏剤を使用。、
清熱涼血剤では大黄、牡丹皮を主薬とする処方を使用。

ただし、せつ・癰ともに化膿球菌により感染症であるため、せつ・癰の治療には、化学療法を第一選択とする。



C進行性指掌角皮症と主婦湿疹

進行性指掌角皮症と主婦湿疹はともに湿疹のカテゴリーの中に入る特殊な湿疹の病形である。

主婦湿疹とは手掌から手背におよぶ皮膚炎で、それが慢性化し、皮膚の新陳代謝の低下、皮脂量の減少とケラチン伸展力の低下による手掌の角化や亀裂を生じたものを進行性手掌角皮症と名づけている。

症状は手掌背に紅斑、丘疹、落屑、亀裂のある皮膚炎を生じる(主婦湿疹)。
慢性化とともに角化と皮膚の肥厚が強くなり、指先より手掌にかけて乾燥して亀裂を生じ、指紋もなくなり痛みを伴う。(進行性指掌角皮症)。

本症の漢方疾病分類では、傷寒瓊皮膚病に属し、主婦湿疹は局所の証の変化により湿疹の太陽病形、少陽病形、陽明病形のそれぞれの病形に分けられる。進行性指掌角皮症は陰病形である。

主婦湿疹の漢方処方は、湿疹および皮膚炎と対応する処方を参考にしながら、局所の証に応じた処方を選ぶ。

しかし、本症は手掌という特定の部位に発症することと、主として婦人に発病するという特種な事情がある。
すなわち、婦人病では、しばしば、於血や冷え性のため、活血化於剤や温裏去寒剤が用いられる。

ちなみに『金匱要略』では手掌の煩熱と乾燥するは、於血が小腹にあって去らないためである=温経湯を用いる。

つまり、本症は、全体の症として血証をもっている場合が多いことを考慮して、
湿疹の局所の証で選んだ方剤+血証の治療に対する方剤を合法することで、よりよい効果を上げることができる。



D円形脱毛症

円形脱毛症は、はじめ円形または卵円形の脱毛班として突然発病する。
そのままで治ることもあるが、しだいに数を増し(多発性円形脱毛症)、癒合して、完全脱毛症となることもある。
その際、眉毛、睫毛、陰毛などの永久毛まで脱落することがある(悪性脱毛症)。
悪性脱毛症にはアトピー性皮膚炎が合併していることもある。

円形脱毛症の真の原因は不明である。
が、従来から栄養神経説、自律神経失調症説、精神身体医学説、内分泌失調説、病巣感染説、毛嚢周囲アレルギー説などが挙げられている。
また、青壮年期に多く、春から夏にかけて頻発する特徴がある。

漢方分類では、雑病系、気証形の皮膚病に入る。
ゆえに治療には理気剤が主体となる。
本証は於血の病態(毛根への血行循環不全)を合併しているため駆於血剤や補血剤の併用を必要とする。

アトピー性皮膚炎の合併症や病巣感染、毛嚢周囲アレルギー炎を思わせる症状には、清熱解毒剤、体質改善剤の併用も考慮する。

なお雑病系の皮膚病は内因が主体となって発病している。
従って、局所の証より全体の証による処方選択が行われる。
つまり、局所の証による治療方剤の選択は従となることが多い。



E尋常性乾癬

尋常性乾癬ははじめ落屑性の紅班を生じ、慢性に経過する炎症性角化性皮膚疾患である。
紅班はしだいに拡大し、爪甲大、貨幣大、掌大となり、多くは雲母状で銀白色の鱗屑を被っている。
主として四肢伸側の対照性境界鮮明な皮疹として認められるが、○幹、頭部、顔面にも生じる。
皮疹は常に乾燥性で、鱗屑を徐々に削っていくとその下の皮膚面から点状の出血がみられる。
これをアウスピッツ現象あるいは血露現象という。
また、皮疹は機械的に刺激した部位に生じやすい。

尋常性乾癬の原因は不明であるが、体質因子に環境因子が加わって発症するといわれている。
わが国の患者にはHLAのCwとの関連が深いといわれる。
生化学的にcAP・cGMP,カテコールアミンの低下、アラキドン酸代謝異常、ポリアミン生成能亢進、血清脂質代謝異常などが認められている。

漢方分類では、雑病系、血証形分類に入る皮膚病である。

尋常性乾癬は、生化学的に血清脂質の代謝異常による高脂血症とそれに伴う血液濃度の亢進、
特異な乳頭下動静脈の蛇行と血露現象などの組織像が漢方的に於血の病態が想像される。
血証形皮膚病の中でも於血による皮膚病として、尋常性乾癬の治療には駆於血剤を第一選択とする。

局所の証として紅斑がある。皮疹が乾燥性である。清熱剤や養血滋潤剤の投与を二次選択剤とする。

@駆於血剤: 大黄牡丹皮湯、桃核承気湯、桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸加意苡仁。
A清熱剤: 温清飲、竜胆瀉肝湯、荊芥連翹湯、黄連解毒湯、白虎加人参湯。
B滋陰養血剤、止痒剤: 当帰飲子、四物湯、消風散。
Cその他、 大柴胡湯、小柴胡湯、補中益気湯、黄耆建中湯、八味丸、五苓散。

最も多く使われる方剤は温清飲、桂枝茯苓丸加意苡仁、桂枝茯苓丸、大黄牡丹皮湯、白虎加人参湯、黄連解毒湯である。

ただし、尋常性乾癬は、特定疾患として認定されていて、皮膚病の中でも難治性の疾患である。
ゆえにその証に応じて的確な治療薬方を選ぶとともに、患者の生活環境、飲食などにも意をそそぎ、
日常生活の改善をはかるようにしなければならない。



F凍瘡(しもやけ)とG皸裂性湿疹(あかぎれ)

しもやけ(凍瘡)とあかぎれ(皹裂性湿疹)は、指趾に起こる皮膚病で、冬季に悪化する傾向がある。
民間では同一の皮膚病と考えている。

しかし、現代医学的には、発病原因、病理とともにまったく異なる皮膚病である。


F凍瘡(しもやけ)

しもやけは小児や老人に多くみられ、寒冷に対してとくに敏感な個体が、寒冷により血行障害を起こして生じる。
寒冷の季節に裸露部、とくに指趾、手足背、耳朶などに紅斑、腫脹、うっ血、水疱、びらん、潰瘍を生じ、掻痒と疼痛がある。
臨床上、樽柿状しもやけと多形滲出性紅斑様しもやけに分けられる。

一般にしもやけ(凍瘡)と凍傷を混同して考えている節があるが、
凍瘡は5〜10℃程度の比較的緩和な寒冷と湿度が反復してあたるか、あるいは長時間にわたり曝露することにより、
一定の素因を有する人のみに起こる。

凍傷は通常摂氏0℃以下の寒冷に曝露された部位に血行障害が主因となって生じる皮膚病で、
誰にでも生じる。

漢方的には、血証系の皮膚病で、於血形、または血虚形。
なお浮腫を合併するので水証系との混合系が考えられる。
ゆえに治療剤としては、活血か於剤、温化水湿剤の投与が有効となる。

G皹裂性湿疹(あかぎれ)

皹裂性湿疹(あかぎれ)は湿疹の一分症であり、
手掌・足底の皮膚が乾燥して、限局性に肥厚硬化し、しばしば亀裂するものを、あかげれといっている。

漢方では、傷寒系皮膚病であり、病期弁証では陰病期の皮膚病の治療方剤の中から選択する。

皹裂性の湿疹は局所の証が血虚の証をあらわし、
また皹裂性湿疹に罹患している人の多くが手足の冷えを訴える寒証の人であるため
四物湯及びその変方が本症の治療薬として選ばれる。



H尋常性天疱瘡

天疱瘡とは皮膚に大形の水疱を形成する症候名であり、
尋常性天疱瘡とは、らい病、梅毒、化膿菌感染症の経過中に現れる症候性天疱瘡を除外したものである。

一般に健常皮膚面にやや隆起した紅斑上に円形、楕円形の豌豆ないし鶏卵大の薄い疱膜のある、
内容澄明な水疱を形状し、皮膚に潮紅をみないのが普通である。

一般に自覚症状を欠くが、多少の発熱や疼痛や掻痒を訴えることもある。
水疱の数は不定で、散在性、集合性、対象性など種々の拝例を示し、あるいは破れてびらん面を生じる。

発症は全く前駆症状なくして卒然と発現する。
経過は慢性で、ときどき新水疱が形成され、数ヶ月で治ることもある(良性水天疱瘡)が、
水疱が一年以上も持続し、衰弱し、落葉状天疱瘡に移行し、ときには重症となり悪性天疱瘡を生じ、予後不良な経過をとることもある。

シニアー・アシャー症候群は落葉状天疱瘡の初期症状として現われ、
水疱形成と同時にびらん痂皮を作り、脂漏性湿疹や紅斑状狼瘡に類似した皮疹を合併する。

天疱瘡の原因は不明で、古来より慢性感染説、中毒説、新陳代謝障害説、内分泌説などがある。
西洋医学的治療としては、ゲンルマニン、サルファ剤が有効であるが、副腎皮質ホルモンが最良な治療剤である。

漢方では、雑病系水証形皮膚病に属する。
ゆえに方剤としては理水剤を投与する。
ただし本症は発病原因が体内にあるためにいろいろな全身症状(全体の証)をあらわしている患者が多いため、
単に局所の証が皮膚、皮下組織に水滞をきたしたために起こる皮膚の水疱症としてとらえるのではなく、
全体の証も十分考慮して治療する。



I帯状疱疹

帯状疱疹は帯状疱疹ウイルスの感染症で、有痛性の紅斑と浮腫で始まり、次いで局面に栗粒大〜大豆大の小水疱が集蔟して出現する。
皮疹は片側性で、一定の神経領域に局限する。

水疱の内容は透明であるが、数日で混濁し、疱膜が壊死の陥り、びらんや潰瘍となり、やがて乾燥して結痂する。
そして軽度の瘢痕と色素沈着を残して治癒する。特殊形として頓挫形、不全形、壊疽形、両側形、汎発形などがある。

全身症状としては罹患神経領域の神経痛、頭痛、発熱、全身倦怠がある。

発病誘因として免疫能の低下が発病の誘因となる。
好発部位は胸部、顔面、頚部、頭部などである。

漢方での病名は「串腰竜」といわれ、漢方分類では、雑病系、水疱形に入る皮膚病である。
ゆえに漢方治療では利水剤が適応となる。
本症は水疱形成とともに強い炎症を伴うため、清熱剤との併用または清熱利湿剤が適応処方となる。

『医宋金監』では竜胆瀉肝湯が有効であると述べている。
症例によっては除湿胃苓湯が有効である。

本症は種々の病形(熱盛形、湿盛形、気滞お血形)を表すため、治療処方も病形によって異なる。



J疣贅(いぼ)

疣贅は尋常性疣贅、青年期扁平疣贅、伝染性軟属腫(水いぼ)、老人性疣贅などの種類がある。
いずれも表皮が限局性に過剰な増殖をするもので、多くは角質層が甚だしく肥厚している。

漢方的な分類では雑病系皮膚病の混合不定形に属する。
ゆえに、局所の証より全体の証を治療の目標とし、処方の選択をする。

ただし、漢方の王道治療法として、すべての種類のイボに意苡仁の内服と意苡仁の軟膏の塗布を行う。

疣贅の中で漢方が著効するのは、尋常性疣贅と青年性扁平疣贅である。

イボが多発し発育の旺盛なもの、
例えば多発性疣贅、青年性扁平疣贅で拡散度の早いものは実証の疣贅とし、
1ないし数個にとどまるものを虚証の疣贅とする。



K尋常性ざ瘡(にきび)

尋常性ざ瘡(以下ざ瘡と略す)はpropioni bacterium acune,一般にアクネ菌とよばれる菌の感染により起こるものであるが、
心身のストレス、便秘、過食、性ホルモンのアンバランス、生理不順、生理痛、更年期の卵巣機能不全などで悪化する。

本症は、漢方分類では雑病系皮膚病の混合不定型皮膚病である。
局所の証にとらわれず身体内部の種々変調によって現れる全体の証に重きを置き治療する。
全体の証として現れる証は、気証、血証、水証などいずれの証も表すし、混合して現れることもある。
ゆえにそれぞれの症によって適応漢方が選ばれる。

女性では性ホルモンの異常による血証(血虚証や於血)がよくみられる。
その場合は補血剤、理血剤、駆於血剤を、また過食や便秘があれば消導剤を、水証がみられれば理水剤を用いるなど、
全身の変調を改善し、皮疹の悪化をコントロールすることが治療の一環として行われる。
それと同時に皮疹の状態に応じて炎症(熱症)が強ければ清熱解毒剤、清熱涼血剤、清熱瀉火剤を乾燥していれば、
滋潤剤などの局所の証に適した方剤を併用した治療をする。

全体の証を重視して投与される漢方処方:
桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸加意苡仁、桃核承気湯、当帰芍薬散、加味逍遙散、六君子湯

局所の証を重視して投与される漢方処方:
清上防風湯、荊芥連翹湯、十味敗毒湯

多汗症でにきびの患者さんには、防巳黄耆湯
手足の冷えの強い、冷え性の患者さんには苓姜朮甘湯
肩こり、立ちくらみなど血虚の証がみられる患者さんには四物湯

つまり、より効果を上げるには、生体のhomeo stasisに重きを置いて治療することが必要になる。