C型肝炎

   

C型肝炎の代表的な症状

全身倦怠感、食欲不振など

合併症

劇症肝炎(約1%)

C型肝炎とは?

C型肝炎ウイルスにより引きおこされる肝炎をいう。
このタイプの肝炎を引きおこすウイルスは、数種類のタイプがある。
また、A型、B型と異なり、かなりの例で慢性化することが明らかにされている。
また、感染ルートは、ほとんどが非経口感染ですが、極少数に経口感染のものがある。
症状は、無症状ないし、軽微な場合がほとんど。
感染すると1〜2カ月の潜伏期をおいて発症する。
現在では、輸血用血液のスクリーニングテストとしてのHCV抗体を測定するために輸血後肝炎は激減している。
医療従事者の針事故による急性C型肝炎が散発的にみられる。
性的接触、母子間感染もごく少数ながら存在する。

発病

C型肝炎ウイルスの伝播には、B型肝炎同様、キャリアが重要な役割を担っている。
キャリアの血液、体液を介して感染する。
以前、多数の輸血後肝炎の原因であった非A非B型肝炎はHCV抗体測定の進歩により、激減している。

発現

症状は、A型、B型に比べ、軽微な傾向を示す。(人間ドックで発見されることが多い)
また、発症の時期があいまいなことも特徴の一つ。
A型、B型が比較的はっきりした症状で発症するのに対して、指標となるAST、ALTの上昇がはっきりせず、慢性化しやすい(60〜70%は慢性化する)。

劇症化率は、1%。

治療

肝機能検査でAST、ALTが数百台の上昇を示し、全身症状が強いときは、栄養補給と経時的な検査のため入院の必要がある。

AST、ALTが100単位以下で、全身症状も軽微なときは、自宅安静と最低週一回の肝機能検査のための通院でよい場合もあるが、これらの経過中に、ひどい症状が出現したり、AST、ALTが比較的急速に上昇傾向を示してきたりする場合は、入院になる。

AST、ALTの上昇が6ヶ月以上持続する場合は、慢性化の可能性があり、腹腔鏡検査、肝生検などの検査が必要。
また、肝組織像が活動性を示す場合は、インターフェロンによる抗ウイルス療法を検討することになる。

C型肝炎に気づいたら?

A型、B型肝炎に比べ、症状が軽く、潜行性に発症することが多いので、無症状の期間があることが問題となる。
C型肝炎の全身倦怠感、食欲不振などは、健常者にもみられるし、感冒でもみられる非特異的な症状であるが、
このような症状が長期間持続するときは、主観的な判断をせず、念のため病院で肝機能検査を受けるとよい。
また、睡眠と覚醒のリズムの逆転、性格の変化などの精神症状がみられるときは、重症肝炎を疑うべきである。



慢性肝炎

慢性肝炎の代表的な症状

食欲不振、易疲労感、消化器症状、ときにみられるものとして発熱、発疹、関節痛など

慢性肝炎と症状がよく似ている病気

肝硬変

慢性肝炎とは?

一般に6ヶ月以上、肝機能異常が持続する場合をいう。
日本では、B型肝炎ウイルスは約150万人、C型肝炎ウイルスキャリアは200万人程度は存在するといわれている。
これらのキャリアの約10パーセント程度は肝機能異常を有する。

発病

生体に肝炎ウイルスが侵入すると、肝炎ウイルスが肝細胞に親和性を示し、肝細胞の中に入り、細胞分裂とともにその数を増加させていく。しかし、生体側も病原微生物(ウイルス、リケッチア、細菌など)を攻撃排除する免疫機構を駆使して生体を守る。しかし、この生体を肝炎ウイルスから守るべき免疫機構の働きが、実は肝炎を引き起こす重要な意味を持っている。その意味において肝炎は、ある種の免疫病としてとらえることもできるのである。肝細胞内で、数を増やしはびこるウイルスそのものは、肝臓組織となじみやすく、肝細胞障害性を持っていない。しかし、外敵としてのウイルスを排除するために、免疫機構は作動を開始する。ところが、肝細胞に親和性を有する肝炎ウイルスが、肝細胞内に存在しているため、免疫機構の攻撃は、正常な肝細胞に対して行われてしまうのです。実は、これが、肝炎の正体である。

生体の免疫力の程度、肝炎ウイルス量の差によって、さまざまな程度の肝細胞障害が引きおこされる。
免疫力は、ウイルスの免疫原性(生体に侵入して、細胞免疫、液性免疫を刺激して、さまざまな抗体をつくらせる性質)によるところが大きく、A型、B型肝炎ウイルスは、この免疫原性が強く、C型ウイルスは、弱いと考えられている。
このため抗体産生が不十分となり、急性感染におけるウイルス排除が不十分となるため、肝障害がだらだらと持続していまい慢性化の傾向をとりやすいと考えられている。

一方、免疫原性の強いB型肝炎ウイルスに対しては、十分な抗体産生がおこり、一気にウイルスの排除が行われるため、慢性化することはほとんどない。
このことから、B型慢性肝炎は、もともとキャリアであるということである。そして、その多くは、出生時からのキャリア状態にあるということである。

■発現

慢性肝炎では、急性肝炎と異なり特徴的な症状がないため、無症状で経過して、健康診断や他の病気の採血検査で偶然発見されることも少なくありません。しかし非特異的な症状として、食欲不振、易疲労感、消化器症状などがみられることがあります。

 AST、ALTが、100単位以下で安定しており、肝の合成能の指標であるアルブミン、コレステロール、凝固系検査値がほぼ正常に保たれる場合は、肝組織像もさほど強い炎症所見を示さず、短期間に肝硬変に移行するタイプではありません。しかし、AST、ALTが数百台の上昇を維持して示しているときは、肝組織像も活動性の炎症像を示し、肝硬変への移行が懸念されます。

■治療

 基本的に大事なのは、安静(運動制限)と食事(栄養)です。薬物療法としては、グルタチオン、グルチルリチン、副腎皮質ステロイド、抗ウイルス療法としてインターフェロン、ラミブジン、famcilovir、gamcilovir、ribavirin、IL‐2、小柴胡湯などがあります。慢性肝炎は、肝の組織学的変化と機能的変化、さらには罹患してからの経過(病期)によりその臨床像にさまざまなバリエーションがみられます。そして、慢性肝炎の治療は一般に長期に及ぶのがふつうです。

 これらのことを踏まえて、個々の例を正確に把握した上で、治療を行い、生活指導をすることが重要です。

 統計的にみると、全慢性肝炎の約15パーセント程度が肝硬変への移行を示します。肝組織所見が慢性活動性を示すときは、肝硬変への移行が想定されますが、このようなときは、腹腔鏡、肝生検などを行い、活動性を確認の上、インターフェロン療法(抗ウイルス療法)を考慮せねばなりません。しかし、インターフェロン療法は、ウイルスのサブタイプによりその効果は異なり、また、副作用もありますので、主治医とよく相談して行う必要がありますが、現在のところ慢性肝炎の治療の基本はインターフェロンと考えられています。

 また、慢性肝炎と診断されたときは、ほとんどがウイルスを有していることを自覚し、公衆衛生の面からも他への伝播を予防するように努めることも必要です。しかし、過度に神経質にならないようにもするべきです。このような日常生活についても専門医の指導を受けるのが望ましいでしょう。



脂肪肝

●脂肪肝の代表的な症状

無症状のことが多く、ときに全身倦怠感(けんたいかん)、右上腹部痛など

●脂肪肝に症状がよく似ている病気

慢性肝炎

●合併症

肥満、糖尿病、高脂血症、痛風など(肥満と糖尿病は合併症であると同時に、脂肪肝の原因ともなっている)

■発病

 脂肪や糖質のとりすぎや、糖の代謝異常によって肝細胞に中性脂肪が蓄積すると、脂肪肝になります。

 肥満や糖尿病の人によくみられます。また反対に、極端な栄養不足の場合にもみられます。長期大量の飲酒によっても脂肪肝になります。その他、ホルモン剤などの特殊な薬によっておこることもあり、まれに妊娠中に高度の脂肪肝がおこることもありますが、原因が不明のことも少なくありません。

■治療

 全身倦怠感や、右上腹部痛などの自覚症状は少なく、検診などの血液検査で偶然に肝機能の異常が見つけられ、超音波検査で脂肪肝と診断されることが大半です。脂肪肝を治すには、原因となっている元の病気を治すことが重要です。

 したがって、肥満のある人は、標準体重の10パーセント以内に体重をコントロールするように、食事療法や運動療法に努めます。また、糖尿病のある人は血糖をコントロールするように食事療法や運動療法を行い、必要に応じて薬物療法を受けます。栄養不足によるものは我が国ではまれですが、この場合には栄養の補給が必要になります。

 食事療法の基本は、栄養素のバランスをとることです。肥満のある人は全体のカロリーを抑え、体重に応じて標準体重1キログラムあたり15〜25キロカロリーの食事をとります。血液検査で中性脂肪の値が高い人は、とくに糖質を制限し、ジュースや清涼飲料は多くとらないように注意する必要があります。

 急激に体重を減らすことはかえって体に悪いといわれており、絶食や菜食に偏ることは避け、一カ月に4〜5キログラムの減量にとどめます。飲酒が原因でない場合でも、過度の飲酒は避ける必要があります。

 脂肪肝は症状が軽いため、ウイルス性の慢性肝炎との区別が難しいことがあります。脂肪肝が疑われる場合、念のためにB型肝炎やC型肝炎ウイルスの血液検査を受けておくことが望まれます。区別が難しい場合、肝生検を受けると診断が確実にできますが、肝臓の働きが悪くなければ脂肪肝の治療を行い、血液検査や超音波検査で経過をみることもできます。脂肪肝では、治療効果があれば二〜三カ月で検査結果が改善されます。



B型急性肝炎

●B型急性肝炎の代表的な症状

A型肝炎とほぼ同じ、かぜ様症状、だるさ、高熱、吐き気、食欲不振、腹痛、黄疸、紅茶様の尿

●B型急性肝炎と症状がよく似ている病気

A型急性肝炎、C型急性肝炎、伝染性単核球症、薬剤性肝炎など

●合併症

劇症肝炎(約1%)

■B型急性肝炎とは?

 急性ウイルス肝炎の約三分の一を占めるといわれていたB型急性肝炎も、衛生意識の向上、ワクチンの普及、さらにはキャリア数の減少傾向などから、徐々に減少傾向を示しているようです。A型急性肝炎が、経口感染するのに対し、B型肝炎は、非経口的ルートでウイルスが侵入することによりおこります。

 日本には、推定150万人くらいのキャリアが存在するといわれていますが、このキャリアの血液、体液を介してウイルス感染がおこります。感染を受けた人のすべてが、急性肝炎になるわけではなく、症状をださない不顕性感染もかなりあると推測されます。

 B型肝炎ウイルスが侵入すると、肝細胞内に入り、その核の中の遺伝子に組み込まれ、一カ月から、長いときは六カ月の潜伏期に入ります。そして、免疫の働きがおきてきて(免疫学的寛容の解除といいます)、肝細胞の中のウイルスを排除するために、攻撃を開始します。この自己防衛的な免疫の働きにより、肝障害がおきてきます。これが、B型肝炎です。

 免疫の働きは、個人により差があり、非常に強い反応であれば、それだけ肝障害は高度となります。一般的には、一過性感染症として、良好な経過をたどり、抗体を残して治癒します。

■発病

 B型肝炎ウイルスの本態の解明、また免疫学の進歩により、感染してから、発病するまでのメカニズムは、かなり明らかとなってきています。肝障害のないキャリアが存在することからもわかるように、肝炎ウイルスそのものに肝細胞障害性はありません。B型肝炎ウイルスは、肝細胞に親和性が良いため、肝細胞にウイルスがすみ着きます。

 生体には、もともと外敵であるウイルス、細菌、その他の病原微生物に対する防衛機構として免疫のメカニズムが備わっていますが、このB型肝炎に対しても同様です。一カ月〜最長六カ月の潜伏期をおいてこの免疫が立ち上がりはじめます。免疫の主体である、細胞障害性Tリンパ球が、ウイルスに対して攻撃、排除活動をはじめるのですが、このとき、ウイルスを内に有する肝細胞はダメージを受けてしまいます。これが、肝炎です。ウイルスを中に含む肝細胞が多ければ多いほど、肝炎は高度となります。

 また、免疫の賦活が強力なほど、肝障害の程度は強くなります。劇症肝炎では、この強すぎる免疫活動が病気の本態ではないかと考えられていましたが、最近、ウイルス遺伝子のpre‐C異変が原因ともいわれており、いまだすべてが明らかにされている状況ではありません。

■発現

 A型急性肝炎と同じような症状が現れますが、症状が一見よく似ている薬剤性の場合は、薬を飲んだ既往、全身の発赤がみられ鑑別可能です。

 かぜ様症状、発熱、全身倦怠感、食欲不振などの症状がおさまりかけた頃、黄疸が出現し、AST、ALTの上昇がみられます。これらの異常は、一カ月くらいで改善傾向を示してきますが、この時期になっても、全身症状が良くならず、AST、ALTが急激な低下を示し、黄疸がますます強くなる傾向をみせるようなときは、劇症肝炎への移行を考慮しなければなりません。専門医がこれをみれば、重篤感があり、比較的診断は容易です。

 自宅安静で治療している場合は、強い黄疸、持続する倦怠感、食欲不振に加え、異常行動、幻覚、性格変化などの精神症状がみられたら、劇症肝炎への移行が考えられ、すぐに専門医を受診する必要があります。

 なお、ここでいう異常行動とは、他へ危害を加えるなどの行動ではなく、例えば、女性であれば、化粧品をゴミ箱に捨てるとか、お金を捨てる、無礼な行動、傾眠傾向などを指します。

■治療

 他の急性肝炎と同様、AST、ALTが数百単位まで上昇すれば、入院加療を原則としますが、重要なのは、安静と栄養管理です。

 病初期には、食欲不振が強いため、カロリー補給のため、補液(点滴)が必要となります。グルコースまたは、グルコース‐電解質液を、500〜1000mlに活性型ビタミンを加えて、経静脈的に投与します。

 このような治療で、一般的には、改善を示してくるものですが、胆汁うっ滞型では黄疸が改善せず、また、胆汁色素が、皮膚に付着するため、かゆみが高度となることがあります。このようなときは、コレスチラミンやフェノバルビタールなどが用いられます。

■B型急性肝炎を防ぐ!

 B型急性肝炎はキャリアの血液、体液を介する、非経口感染でおこります。しかし、最近エイズを中心とする性行為感染症に対する、一般の認識の向上により、B型急性肝炎は減少傾向を示しています。

 B型肝炎ウイルスそのものの解明に伴い、感染防御抗体も明らかにされて、バイオテクノロジーによるワクチン(リコンビナントワクチン)が開発され、積極的に用いられています。そして一九八六年よりB型肝炎母子感染防止事業が開始されたため、新たなHBウイルスキャリアの数はかなり減少しています。

 また、抗体を持たない人が不幸にして、B型肝炎ウイルスに感染したことが明らかな場合は、とりあえず、B型肝炎ウイルスに対する抗体を大量に含むグロブリンを投与し、同時に能動免疫を獲得させる目的で、ワクチンを接種します。このような、対策によりかなり肝炎の発症を予防することができます。



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