狭心症

   

狭心症とは、

狭心症とは、発作的に、

@胸が絞めつけられる、
A胸が強く押さえつけられる、
B胸の中が焼けつく、
C胸の奥がじ〜んと痛む

などの症状があらわれる病気。
これらの症状を、まとめて「狭心症発作」と呼ぶ。

注意:
発作的に現れるというのは?
ある限られた時間の間にだけ症状がおこり、普段は無症状の状態。

発病

狭心症の発病は、ほとんどが冠状動脈の硬化、れん縮が原因としておこる。

心臓を作る筋肉(心筋)は、冠状動脈から血液を会して酸素や栄養素の供給を受けている。

冠状動脈を流れる血液の量は、正常では、心筋が、その働きを保つのに必要なだけの酸素や栄養素の供給を受けている。
動脈硬化や血栓によって冠状動脈の内腔が狭くなると、上記のような必要に応じた血流の増加(必要なだけの酸素や栄養素の供給)がいつもおこるとは限らなくなる。
狭窄が軽い場合は激しい運動をしたときに、狭窄が強い場合は少し動いただけでも、冠状動脈を流れる血流が不足してしまう。
したがって酸素や栄養素の供給が不足するという事態がおこりやすくなる。
これが狭心症の発病の最も多い原因である。

冠状動脈のれん縮がおこる場合も同様であるが、特徴は、
れん縮は安静にしているときにおこり、冠状動脈の完全な閉塞をおこすことが多いことである。

狭心症の特徴的な症状、

発作的に起こる胸部絞扼感などの症状の特徴は、

@胸が絞めつけられる、押さえつけられる、重くなる、熱くなる、じ〜んとするなどの不快感が多く、痛みを感じることは少ない。

Aおこる場所は胸の中央部(胸骨の奥)のことが多い、ときに左肩から左腕にまでひびく、注意:左胸部だけにおこるときは狭心症ではない。

B狭心症発作は突然おこり、比較的急におさまる。

C歩行中、急ぎ足で歩いているとき、坂道や階段を昇っているとき、体を動かしている最中、精神的に緊張、興奮したとき、また、起床時、午前中、食後、寒いときには、起こしやすい。

注意:安静にしているとき、夜間、明方就床中におこるものもある。

D症状をおこす頻度は、月に1回くらいから、1日に数回くらいまで幅があり、最も一般的な頻度は1週間に1〜2回である。

E歩行中、緊張時などにおこったときは、症状の持続時間は短く、誘因がとれるか安静にすれば、多くは3分以内、長くても15分以内に自然におさまるのが普通である。

注意:安静時におこるものは、それより持続時間が長いことが多い。

F狭心症発作は、ニトログリセリンの錠剤を舌下に使うと、2〜5分でおさまる。


狭心症の種類

狭心症は、

症状がどのようなときにおこるかによって、

@労作狭心症
A安静狭心症

に、分類され、

状態が安定しているかどうかによって、

@安定狭心症
A不安定狭心症

に分けられる。


労作狭心症とは、

歩行や、階段の登り降りなどの身体的労作時、または精神的興奮によって誘発される狭心症。(古典的な狭心症)

発作は誘因がとれれば、数分内におさまるのが普通。

安静狭心症とは、

特別の誘因なしにおこる狭心症発作をいう。

労作狭心症発作に比べ症状が強く、持続時間が長い傾向にある。

注意:労作狭心症があるものにおこる場合と労作時には発作がないものにおこる場合があり、それぞれ労作安静狭心症、異型狭心症と呼ばれる。

異型狭心症とは、とくに夜間や明方のほぼ決まった時間におこる狭心症で、発作中の心電図は、心筋梗塞の初期に似た変化を示すという特徴がある。


安定狭心症とは?

発作のおこり方がほぼ一定しているもので、労作狭心症のほとんどと、安静狭心症の一部がこれに属する。

不安定狭心症とは?

@この1ヶ月間に狭心症が新しくはじまった場合、
A毎日のように、頻繁におこるようになった場合、
B安静狭心症がはじまった場合
Cニトログリセリンが効きにくくなった場合

を、いう。

注意:安定狭心症に比べ、心筋梗塞をおこす危険が大きい。

狭心症のポイント

@発作の予防(なるべく発作がおこらないようにすること)
A発作の治療(万一発作がおこった場合でも、できるだけ早くおさまるようにすること)

発作の治療

労作狭心症の発作は労作をやめれば数分以内に自然におさまるのがふつうですが、
精神的な興奮がきっかけでおこった場合はそれよりやや長引くことが多く、
安静狭心症の発作は一層長く続く傾向があります。
長い発作は心臓の筋肉を傷つけたり、心筋梗塞や危険な不整脈をおこす恐れがあるので、いずれにしろ一番重要なことは、早く発作をおさめることである。

発作がおこったときは、

@すぐに安静にする、
A1〜2分で自然におさまらない限り、ニトログリセリンなどの錠剤をすぐに舌下に含むことが重要。
注意:ニトログリセリン舌下錠は、口腔の粘膜から吸収され2〜3分で効果を現す。
注意:1錠で不十分なときは2錠使ってもよい。
注意:狭心症と言われた人は、つねに、ニトログリセリン舌下錠を携帯するようにしてください。
(ただし、古くなると効果が薄れるので、少なくとも半年に一回は新しいものと取り換える必要がある。)

ニトログリセリンの吸入用のスプレーもあるが、効果は舌下錠と同じ。

発作の予防

労作狭心症ではその誘因となるような運動を避けることが第一。
とは、いっても、極度に安静にすることは一般的には、むしろ好ましくない。
発作がおこる一歩手前までの運動はしたほうがよいといわれている。
また、精神的にもなるべくストレスを減らし、安静を保つように心がけ、不安の強いときは精神安定剤を処方してもらうようにする。

多くの場合、このような日常生活の注意と同時に、
硝酸薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬などの薬剤を使用することが必要。

薬剤によってその作用、使い方に違いがあります。
通常、労作狭心症だけのときはβ遮断薬か硝酸薬、
安静狭心症のみのときはカルシウム拮抗薬、
両方ある場合は三種の薬剤を併用する、

のが良い。

注意:これはあくまで原則、それぞれの病状に合わせて最も適した薬剤とその組み合わせを、できるだけすぐれた専門医に選んでもらうのがベスト。
ときには入院して硝酸薬の静注など、強力な薬剤治療を受ける必要がある患者さんもいる。

最近は冠状動脈にバルーンのついたカテーテルを挿入し、バルーンをふくらませて狭窄部を拡げる経皮経管式冠動脈形成術、
カテーテルの先についた特殊な鉋で盛り上った部分を削り取る動脈硬化切除術、

この2つの方法を行う場合が増えている。

さらに、ひろげた狭窄部がまた狭くなることを防ぐ目的で、細いステンレス線の網でできた筒(ステント)を狭窄部に留置することもよく行われる。

これらの治療をするべきかどうかは、冠状動脈造影法という検査をした上で決めるが、成功すれば薬剤治療にまさる。

冠状動脈造影法を実施した結果、必要と判断された場合は、自分自身の下肢の静脈や内胸動脈などを使って大動脈と冠動脈の間にバイパスをつくる手術を行うこともある。



狭心症に気づいたら、

@自分自身で狭心症の症状を自覚したらどうする?

狭心症を思わせる症状を自覚した場合は、なるべく早く専門医の診察を受ける。
狭心症は救急処置を要することはまれであるが、心筋梗塞の前ぶれである場合が少なくない。
また、診断が決まるまで症状をおこすような運動は避け、旅行、スポーツなど日常生活の範囲を越える行動も慎むべきである。
自分だけの判断による処置は禁物。

なお、症状が頻繁におこったり、長く続いたりするときは、すぐに入院が必要である。(緊急入院!)

狭心症と診断されたらどうする?

前述の発作を予防する治療を行うとともに、狭心症のおもな原因である冠状動脈の硬化の進展を防ぐため、日常生活に注意する。

すなわち、冠状動脈硬化症、発生の危険因子を除くことが大切。

@喫煙はただちに中止
A高血圧、高脂血症(コレステロール、中性脂肪)、糖尿病、痛風のある人は、
すぐに専門医の指示にしたがって、それぞれ食塩、脂肪分、糖分、肉食、アルコールの摂取を制限すること。
B肥満している人は食事の是正と適度の運動に心がけ、できるだけ標準体重に近づくようにすること。
C適度の運動は精神的ストレスを減少し、冠状動脈の自然のバイパスを増す効果もあるのでよい。

予防法

中年になったら、たとえ症状はなくても、

@定期的に健康診断を受け、
A冠状動脈硬化の危険因子についてチェックを受け、
B何らかの危険因子が見つかったときはその除去を図る、

注意:家系的に狭心症や心筋梗塞の発生が多い人は、若いうちから注意すべきである。
また、それらの検査と同時に運動負荷試験を実施してもらうことも大切。



心筋梗塞

心筋梗塞の症状

狭心症と似ているが、

@狭心症よりはるかに強い、恐怖と不安を伴う激しい胸痛、胸部絞扼感が急におこる。
Aこれが、数10分ないし数時間続く。
B同時に冷や汗や吐き気もおこる。

心筋梗塞と症状がよく似ている病気

狭心症、解離性大動脈瘤、自然気胸、急性心膜炎、肋間神経痛など

合併症

不整脈、急性心不全、ショック

心筋梗塞とは、

心筋梗塞は突然、激しい胸痛、胸が絞めつけられる恐怖感がおこって、これが、数10分以上も続き、そのまま死亡することもある、それは恐ろしい病気である。

発病

大多数は冠状動脈が、動脈硬化や血栓のため、一部はれん縮のために高度に狭窄または閉塞される結果、
その冠状動脈によって酸素や栄養素を受けている心臓の壁(心筋)が腐ることによっておこる。
狭心症が進んだ段階と言える。

はじめの時期を急性心筋梗塞と呼び、1ヶ月以上経って腐った部分が固まった状態を陳旧性心筋梗塞と呼ぶ。

心筋梗塞は胸痛あるいは胸部絞扼感が急におこる点で狭心症と似ているが、
その性質、強さ、おこり方、持続時間、ならびにその他の症状に関し、かなりの違いがある。

@症状は激しい胸部絞扼痛が多い、
今にも死ぬのではないかといった恐怖、不安におそわれる、
冷や汗、吐き気、便意を伴う、
多かれ少なかれぼんやりして夢うつつの状態になる。

注意:老人などでは、軽い痛みや圧迫感にとどまる場合や、ほとんど異常を感じない場合もある。
また、急に意識をなくして倒れる、息苦しさを感じる、発熱する、などあまり特徴的でない症状で発病することある。

A胸痛の場所は、前胸部の中央が最も多い、二番目に胸全体、その他、首、背中、左肩、左腕、上腹部まで拡がって痛みを感じる人もいる。

B症状は、何の前ぶれもなく突然おこる場合もあるが、50%以上は、狭心症発作が、新しく始まったり増えたりするという前兆に続いておこる。
また、発病は、多くの場合、疲労、緊張、過食、暴飲、過度の寒さや暑さなどがきっかけで起こる。

C症状は一般に数10分から数時間にわたって続き、完全におさまるまでに、1日以上かかることもある。
しかし、ときには、5〜10分で終わることもある。
注意:ニトログリセリンはあまり効かないのがふつう。

Dしばしば脈の乱れ(不整脈)をおこす。これが急死の原因になる場合もある。
また強い呼吸困難や喀痰の排出をおこす(急性心不全)、
血圧が下がり顔面蒼白になる、
手足が冷たくなる(ショック症状)
などを起こす場合もある。

経過

心筋梗塞は発病直後に急死することがまれでない。
発病後、数時間ないし数日間のうちに死亡することが多い病気である。
特に、ショック症状、急性心不全、重症不整脈をおこしたときは、一層危険で、速死亡することが多い。
しかし、発病後一週間を無事に切り抜ければ、再発のおこらない限り、死亡する恐れはずっと少なくなる。

一般的には、胸部症状は翌日までにおさまり、気分はすっきりする。
こうなれば、ショック症状、心不全、不整脈をおこす危険も日を追って減ってくる。
以後の経過は、心筋梗塞の大きさや冠状動脈の状態によりいろいろであるが、順調なら4〜6週間で退院できる。

治療

発病初期の治療

心筋梗塞の発病を思わせる症状がおこったときは、一刻も早く専門医の診察を受けることが必要。
診断が確認されたら冠状動脈造影で冠状動脈の状態を調べ、血栓があればそれを溶解する治療を受けること。
成功すれば梗塞の大きさを小さくする作用があるのでよい。
さらに最近ではバルーンのついたカテーテルを用いて、閉塞した冠動脈を開通させる療法があるので、できれば、これをやってもらうとさらによい。

病院では、安静にして酸素吸入を行うとともに、麻薬を含む鎮痛薬、鎮静薬を使い、できるだけ胸痛や不安を取り除くようする。
食事は一日間は絶食して点滴注射を行う。
状態をみながら一週間くらいで常食に戻すのが普通。

また、優秀な専門医なら、その間常時心電図や血圧その他の状態の監視を行って危険な不整脈、心不全、ショックの発生、梗塞の再発などに注意し、
もしそれらの徴候を認めたときはすぐに治療できるように努めます。
そのための設備や熟練したスタッフを備えた専門病院を選ぶことが一番重要である。

その後の治療

発病から数日たった後は、症状、心電図、その他の様子をみながら、段階的に運動量を増やし、行動範囲を拡げていく。
食事や入浴についても同様。

一般的には、4〜6週間で退院、2〜3ヶ月で仕事に復帰できる。
注意:途中で狭心症、不整脈、心不全がおこった患者さんは、それぞれの治療がさらに必要になり、それによって社会復帰が遅れたり、生活が制限されてしまう。

いずれの場合も、食事、生活に注意し、適度の運動を行うことが大切。
このことは仕事に復帰した後でも変わりない。

心筋梗塞に気づいたら、

発病時の応急処置

@第一に最も楽な姿勢で横になる。
A絶対安静を保つ。
注意:転々と寝返りをうったり、起き上がったりすることはよくない。
注意:無理に吐いたり、いきむことも危険大。
注意:胸を冷やすと苦痛がやわらぐこともあるが、強く冷やすのは禁物。
B呼吸が苦しいときは、適当な背もたれで支えて坐位をとること。
C手もとにニトログリセリンがあればすぐに舌下に使ってみる。
ニトロは心筋梗塞にはあまり効かないが、狭心症の場合なら効く。
D睡眠薬があれば、これを服用する。
E酸素吸入ができる状態ならすぐに始める。

緊急入院

上記応急処置をとると同時に、すぐに救急車を呼ぶ。
そして、できるだけ優秀な専門病院を選び、すぐ入院することが必要。

注意:専門病院なら、心筋梗塞かどうかの診断も、症状に心電図や血液検査(血清酵素活性など)を加えて行われるし、
治療も最新整備や新しい治療法の導入により、大きな期待がもてる。

診断、治療のいずれのためにも、自分たちだけで判断せず、一刻も早く専門病院に入院すること。

死ぬか、生きるかは、入院するまでの時間によって決まる!!!

予防法

心筋梗塞の予防には、
@動脈硬化を防ぐ、
A誘因を避ける、
B前兆に注意する、

の三つが大切である。


@動脈硬化の予防法

心筋梗塞は動脈硬化の進んだ人に多くおこる。
中年になったら高血圧、高脂血症、糖尿病、痛風など動脈硬化を促進する病気がないかどうかをチェックする。
異常が見つかったら、それぞれ、食塩、動物性脂肪(コレステロールの多いものを含む)、糖分、肉食などの摂取を減らす。
さたに十分な治療を受けること。
喫煙は厳禁。
太りすぎを避ける。
適度の運動をする。

A心筋梗塞誘因を避ける

心筋梗塞は過度の疲労や緊張、暴飲暴食、天候の急変などをきっかけとしておこることが多い。
中年以降にはなるべくそれらを避けるよう心がけること。

B前兆に注意する

これまで何の症状もなかった人に新たに胸痛、胸部圧迫感などがおこりはじめたときは心筋梗塞の前兆のことがある。
程度にかかわらず、すぐに専門医の診断を受けること。
また、狭心症と言われている人では発作がおこりやすくなったり、回数が増したり、持続時間が長くなったりすることが心筋梗塞の警戒警報である。
ニトログリセリンが効きにくくなったときも同様。
心電図、ことに運動負荷試験によって危険の増したことがわかる場合もある。


以上、心筋梗塞は、非常に怖い病気です。みなさん十分注意してください。


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