「特集:気管支喘息」
■症状
呼吸困難や息切れが発作性におこる病気で、多くの場合、胸が「ぜいぜい」「ひゅーひゅー」と鳴る喘鳴(ぜんめい)を伴います。
発作のときには痰の切れが悪くなり、せきが立て続けにでたりすることがあります。慢性化した喘息でないかぎり、このような症状は適切に治療すれば消失し発作前の平常な状態に戻ります。しかし、気管支喘息の特徴は、このような発作が繰り返しおこることです。年に一〜二回しかおこさない人もいれば、毎日おこす人もいるなどさまざまです。時期的には季節の変わり目、一日のうちでは早朝が発作がおこりやすいときです。
軽症の発作では、喘鳴と胸が重い感じだけでほとんど呼吸困難を感じませんが、重症発作になると息苦しくて横になって寝ていることができなくなり、座って前かがみの姿勢をとらなければ呼吸ができないような状態になります。これを起坐呼吸といいます。
ほかに喘鳴と呼吸困難を伴う病気として、心臓喘息、慢性肺気腫、びまん性汎細気管支炎、喉頭がんがありますが、気管支喘息ではこれらの症状が発作性におこるので、それが最初の発作でないかぎり診断は容易です。
■日常の対処法
気管支喘息にはその発病にアレルギーがかかわっているアレルギー性喘息とそうでない非アレルギー性喘息の二種類がありますが、アレルギー性喘息の人の大半はダニ抗原を多く含む室内塵の吸入で発作が誘発されるので、これを避けることが大切です。
床はダニの除去が難しいジュウタンやカーペットより木製、リノリュームが理想的です。寝室にはとくに注意が必要で、マットレス、スプリング、枕などは新品のものをビニールシートなどでおおいダニが蔓延するのを防ぎます。敷布や毛布は五五度以上の湯温で定期的(できれば週一回)に洗濯します。室内塵が増えるもととなるペットの飼育、ぬいぐるみなども避けます。徹底的なダニ駆除は業者に依頼するのがよいでしょう。
喘息患者のいる家庭では喫煙は全面的に避けることが必要です。また、喘息患者の15〜20%がアスピリンなどの解熱鎮痛薬で発作が誘発されるので、市販薬は不用意に飲まないことが大切です。
■西洋医学の一般的治療法
最近の研究により、喘息患者の気管支粘膜では特有の炎症がおこっていることがわかってきました。これを抑えるために基礎的治療として吸入性のステロイド剤、抗アレルギー剤を使います。喘鳴や呼吸困難などの症状がある場合には、これに加えて気管支拡張剤である?受容体刺激剤、キサンチン剤、経口のステロイド剤などを使います。
<特集:気管支喘息と漢方医学>
気管支喘息は、現代の3大アレルギー疾患の一つ(他はアトピー性皮膚炎と鼻炎)で、患者数も多く、今も増加傾向にあります。しかも他のアレルギー疾患に較べて、死亡例など重篤な症例が多いのも深刻な問題です。 西洋薬でも気管支拡張剤やステロイドをはじめとする強力な薬が揃っていますが、副作用が強いわりには、なかなか完治に至らない厄介な慢性疾患です。
この喘息に対し、漢方薬は非常に効果的な療法の一つとして、近年注目を集めており、実際の医療現場でも使われる機会が増えてきています。漢方薬が得意とする病気の代表で完治できる例も多数あり、西洋薬との併用も、とても有意義です。
喘息でお悩みの方は一度本格的な漢方薬を試してみることをおすすめします。喘息治療用の漢方薬はたくさんの種類が考案されており、幼児から高齢者まで体質に合った処方が必ずみつかるはずです。
気管支喘息は、気管支が何らかの原因により狭窄をおこし、呼吸困難におちいる病気です。原因となるものはハウスダストや花粉をはじめ、煤煙・ストレス・食物・温度差・過労などいろいろあります。
大部分はアレルギー性で、(まれに薬物性などの非アレルギー性のもありますが、) 排気ガスなどの環境要因や生まれ持った遺伝的な素因が発症に大きく関与しています。従って同じ家族内に複数喘息患者がいる事も稀でなく、喘息ではなくても鼻炎やアトピー性皮膚炎などを両親どちらかが持っていることが多い傾向があります。また、喘息患者、自らが鼻炎やアトピー性皮膚炎を同時に併発していることもあります。
喘息は発作時は喘鳴を伴う呼吸困難をおこしますが、治まってしまえば重症例を除くとほぼ平常の健康な状態に戻ってしまうのが一般的です。
発作は非常に苦しく重症の場合命にかかわる事もある為、まず発作時の症状をすみやかに抑える対症療法薬が必要です。この目的に使われる薬は西洋薬が圧倒的に効きめが早く強力であり、現在では漢方薬の出番はほとんどありません。
一方平常時に発作を予防する目的で使う薬に関しては、西洋薬でもなかなか理想的なものがありません。この目的では漢方薬は非常に有効な場合が多く、また長期連用しても副作用の危険が低い上にうまく行けば完全に発作がおこらない状態にまで改善できることが少なくないのです。その上、鼻炎・花粉症などを併発している症例に対して、一つの処方で同時に両方の病気の改善ができるのも漢方薬の優れた長所です。
結論として喘息発作時には西洋薬を使い、平常時には漢方薬を主体とする。そして、漢方薬の効果が表れてきたら、徐々に、西洋薬を減らして行くというスタイルがとても有効であると私は考えています。
私は喘息の相談を受ける事が多いのですが、漢方薬がとても良く効いた症例を多く経験しています。それらの患者さんの大半は、いわゆる西洋医学での治療を受けてきて喘息の十分なコントロールができなかった慢性例であったことを考えると、漢方薬の有効性はかなりなものであるといえます。もちろん漢方薬でも十分な改善がみられないケースも存在しますが、喘息患者の大部分に大きな効果を発揮し、しかも他の疾患に較べ漢方薬の効果が割合早い時期から発揮される傾向があります。(早い人だと数日で効果がみられます)喘息でお悩みの方は、一度、漢方の専門家にご相談の上、ご自分にあった漢方処方を選んでもらうことをお勧めします。予想以上の効果が実感できるはずです。
<気管支喘息に用いる漢方薬>
気管支喘息に用いられる漢方薬は、よい処方がたくさん考案されています。
代表的な処方を体質別に紹介します。
<実証タイプ>比較的体力があり胃腸も丈夫な人、
痰は比較的少なく口渇があり発作時に顔面発赤や発汗がみられるような方は麻杏甘石湯を基本にした処方が頻用され、必要に応じ半夏厚朴湯を併用します。肥満の方には防風通聖散や大柴胡湯も喘息と肥満の体質改善を兼ね使われ効果を発揮します。
<中間証タイプ> 体力的に普通程度の人、
柴朴湯は現在もっとも喘息治療に使われている処方であり、幅広い体質に使えますが、のどの詰まり感がある方やストレスで発作を誘発しやすい方に特に良い薬です。水様の痰が多く出るタイプでは小青龍湯を良く使いますが、鼻炎を併発している人には同時にこちらも改善でき一石二鳥です。痰の少ないタイプでは滋陰降火湯も使われますし、痰のきれが悪い場合は清肺湯が使われます。
<虚証タイプ>体力的に比較的虚弱な人や高齢者、
空咳か痰の切れにくいようなタイプには麦門冬湯を頻用しますが、高齢者でも安心して使えます。水っぽい痰が多ければ苓甘姜味辛夏仁湯がよく使われ、冷えが強く血色もすぐれない方には麻黄附子細辛湯が選択されます。胃腸虚弱が強ければ参蘇飲が体質強化を兼ね効果的です。
<小児喘息>小児喘息用の漢方薬
以下の処方は本来は子供用というわけではなく、大人にもよく用いられるものですが、割合味が飲みやすい事もあり子供に使われる機会が特に多いものです。小児の喘息は特に漢方薬の効果が早く出る場合が多く、又副作用の点でも安全性が高いので、もっと多く使われるべきだと私は思っています。
神秘湯は先生によっては小児喘息のファーストチョイス(第一選択薬)にしている処方ですが、痰の少ない症例向きです。五虎湯も同様に飲みやすく効果も早い処方です。小児でも虚弱体質の場合は小建中湯を単独か併用薬として用いると良い結果がでることが多いものです。
以上、大まかにタイプ別に処方を列挙しましたが、喘息に用いる処方はまだまだ沢山あります。服用してみたい方は、専門家に相談される事をお薦めします。民間薬としてはオオバコの葉を煎じて飲む方法がありますが、喘息ではあまり万人向けの効果の上がる方法は知られていません。