ヘルスサイエンス「心の健康相談室」

 Q&A集

■大学受験をひかえての恋愛はやめた方がよいのでしょうか?

相談

 17歳の高3です。大学受験をひかえています。私は地方の女子校で、これまで男の子とつきあったことはありません。ところが、今年の夏、予備校で仲良くなった男の子のことを好きになってしまいました。夏期講習が終わってから、一度二人で映画を見に行きました。その後は電話で話をしています。前よりも好きになってしまいました。友達に相談すると受験が終わるまで恋愛はしないほうがいいと言われました。どうしたらいいのでしょうか?

回答

 いままでの相談の経験から言えば、恋愛を受験のバネにして成功した女の子は3割くらいです。恋愛は受験のバネにもなるし妨げにもなります。一般的に恋愛では夢中になってしまったほうが多くのものを失います。恋愛に夢中になりすぎると勉強がおろそかになり受験に失敗するのは当たり前のことです。ですからしないでいいのなら恋愛はしないほうがいいでしょう。でも、好きになってしまったものをあきらめるというのは、実際にはつらく難しいものです。恋愛はしないと決めても勉強中に好きな男の子のことばかり頭に浮かんで勉強に身が入らないのでは逆効果です。それほど強い気持ちならいっそきちんとつきあってみるのもいいでしょう。しかし一定の交際のルールを決めて会うようにしたほうがベストです。たとえば、週に1回2時間までとか、週に1回二人で図書館で勉強するとかです。
 一番いいのは、同じ大学を第一志望にして二人でガンバルことです。学力のレベルが同じくらいならもっとも効果的です。レベルが離れているのなら同じ大学を志望校にするのはやめたほうがいいでしょう。どちらかが下のレベルに合わせる結果になるからです。
 セックスはしない方がいいでしょう。セックスがいけないとは言いませんが、ただ、あなたがセックスの経験者なら、セックスが男と女を夢中にさせる要素が強いことを知っているはずです。特に18歳くらいの男の子は一度セックスの相手を見つけると毎日でもしたくてしたくてたまらなくなるものなのです。そうなると彼の存在はあなたの勉強時間や集中力を失うもとになるでしょう。
 もしあなたがセックスの未経験者なら間違いなくやめておいた方がよいでしょう。初めてのセックスはあなたをいろいろな意味で戸惑わせます。それに適応するまでに2、3ヶ月の時間が無為に流れてしまうかもしれません。
 結論をいうと、もしあなたが、彼を好きで好きでどうしようもなく会わずにはいられないのなら、週に1、2度会うくらいのことはいいでしょう。でも、セックスは絶対にしないことです。もしあなたが彼に会わなくてもなんとかやっていけそうなら交際は受験後までとっておきましょう。大学受験は、あなたの人生の最大のポイントの一つです。いっときの恋に惑わされることのないようにしっかり頑張ってください。 
 最後に東洋医学の話をしますが、精神状態を安定化させる「陳皮」「半夏」という生薬を含む漢方薬を積極的に服用し、集中力を上げる「天柱」「風池」というツボを刺激してください。これで、少しは冷静になれるはずです。(注)漢方薬は、できるだけ優秀な医師、薬剤師に相談の上、必ず自分の体質に合ったものを服用してください!


■男の子とはじめてお付き合いをしていますが、最近彼が身体を求めてきます。どうしたらよいでしょうか?

相談

15歳の中3です。高3の男の子とつき合い初めて3ヶ月です。彼のことは大好きなのですが、最近、身体を求められて困っています。私は、大好きな男の子に処女を捧げるのは構わないと思っているし、彼とエッチをするのがイヤというわけではありません。でも、少し早すぎるような気がします。友達の中には、つきあってもいない男の子とさっさとエッチしてしまう子がいますが、そういうのは私はイヤです。少なくとも、1年くらいはつきあってからにしたいと思います。それにそういうのは高校生になってからでもいいと思います。でも、彼は、「なんでつきあっているのにさせてくれないんだ」というようなことを言います。彼とはキスまではしています。これからどうしたらいいのか教えてください。

回答

 あたりまえの話ですが、あなたが処女を捧げることのできる男性は、人生の中でたった一人です。あなたのつきあっている彼が、それに値する男性かどうか冷静に考えることです。あなたは、自分を冷静に見ることのできる女の子のようですから、冷静に事を考える能力はあると思います。
 一般的に言って、15歳で初めて男の子とつきあって、その彼に処女を捧げてしまうのは早すぎると思います。それは、あなたの考える通り正しいと私は思います。大事な処女なのですから、1年といわず、2年や3年はつきあってからでも、全然遅くはありません。
 あなたの彼は、すぐに身体を求めてくるそうですが、これは注意したほうがいいでしょう。男の子は、本当に好きで好きでたまらない女の子に対しては、なかなか身体のことは切り出せないものなのです。もし、そんなことを言って嫌われたらどうしよう、と考えてしまうからです。ですから、ひょっとすると、彼はあなたのことをあまり大切には考えていないのかもしれません。それを見極めるには、やはり何年かつきあってみる必要があるでしょう。
 彼の求めをさける方法とは、いま私が書いたことを、あなたの口からはっきりと彼に伝えることです。あなたの彼に対する気持ちをこめて、誠心誠意で話せばきっと彼はわかってくれます。もし、そんな、あなたの気持ちをわかってくれない彼なら、大好きでも一度は距離を置いてみるのもいい方法だと思います。
 それと、10代の男性というのは、ひどい言い方かもしれませんが、性欲のかたまりみたいなところがあるのです。誰でもいいからとにかくエッチしたい、と考えている男の子も多いはずです。ですから、女の子はその点を特に注意するべきだと思います。
 最後に東洋医学の話をしますが、精神を安定化させる「柴胡」「芍薬」を含む漢方薬と女性ホルモンのバランスを整える「当帰」を含む漢方薬を併用してみることです。これで精神面のストレスが緩和して安定した毎日を送れます。
(注)漢方薬はできるだけ優秀な医師、薬剤師にご相談の上、必ず自分の体質に合ったものを服用してください!




■毎日明け方近くまで眠れない

相談

なかなか眠れません。明け方近くまでぐずぐずしていて、眠っても眠りが浅く、疲れがとれません。ほとんど毎日そういう状態なので、会社にいても頭がボーっとして、注意されることもしばしばです。ゆったりお風呂に入ったり、アロマテラピーなども試みましたが、効果はありません。眠らなくてはと、思えば思うほど眠れなくなってしまうのです。とくに大きな心配事もありません。仕事はコンピューターを使った事務です。睡眠薬は飲んでいません。どうしたらよいのでしょうか?(27歳、OL)


回答

「夜眠れない」という経験は、誰でも多かれ少なかれあります。「不眠」というのは誰でも経験するごくありふれた状態です。日常のごく些細な出来事(たとえば、試験や旅行の前日、心配事のあった日、ベッドや枕が変わった夜、気候の変わり目など)が眠りに微妙に影響します。

人は眠ることによって心身の休養をとり、エネルギーを蓄えるのですが、眠り方は人によってかなり異なります。

一般に、7時間の睡眠が必要であるといわれておりますが、必ずしもそうではありません。毎晩5時間以下の睡眠で十分な人もおりますし、少なくとも9時間以上は眠らなければだめだという人もいます。

朝起きたときに「よく眠った」という熟睡感がなく、疲れが残って翌日の仕事に支障がある場合、「不眠症」といいます。ある調査では、日本人の約3割が不眠症であるといわれています。ストレスが多く、時間に追われる忙しい生活を強いられ、さまざまな刺激が多い現代社会では、不眠症はますます増えていくはずです。

不眠症には、いくつかのタイプがあります。

1.寝付きが悪い(入眠困難)、
2.夜中にときどき目が覚める(中途覚醒)、
3.朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)、
4.寝た気がしない(熟眠障害)

などがあります。

また、不眠症の原因には、

1.環境的なもの(騒音、気温、明るさなど)、
2.生活リズムの変化によるもの(時差ボケ、不規則な生活など)、
3.心理的なもの(心配、不安、興奮など)、
4.身体の不調(かゆみ、疼痛、身体疾患など)、
5.薬物によるもの(カフェイン、アルコール、降圧剤など)、
6.精神障害によるもの(分裂病、躁うつ病など)、
7.睡眠中の異常現象によるもの(夢中遊行、夜驚、睡眠時無呼吸症など)、
8.明らかな原因のないもの

などがあります。

あなたの場合は、明らかな原因が認められない不眠で、専門的には「精神生理性不眠」と呼ばれるものですが、最も多いタイプの不眠症です。

このタイプの人は「眠り」にこだわり、眠れさえすればすべてが解決すると思いこんでいます。夕方になると、「今晩も眠れなかったらどうしよう」と不安になり、食事に気を使ったり、ゆっくりお風呂に入ったり、香りのよいものを身近に置いて、とにかく快適な睡眠がとれるようにひたすら努力します。

このようなタイプの不眠症は、几帳面で、完全欲やこだわりの強い人にみられますが、あなたはどうでしょうか。

たまたま何かのことで眠れなかったりしますと、次の日も眠れないのではと不安になり、眠ろうとすればするほど眠れなくなります。眠ることばかりを考え、「人は8時間は眠るべきだ」と決めてかかり、家族に「寝息を立ててよく眠っていたよ」といわれても、頑固に否定します。

では、どうすると眠れるようになるのでしょうか。

まず大切なことは、睡眠に対するあなたのこだわりをなくすことです。
人によって睡眠のパターンは異なり、何時間眠らなければならないという決まりはない、ことを銘記して下さい。

次に、毎日の生活のなかで試みてもらいたいことは、天気の良い日は外出し、太陽の光をいっぱい浴びながら散歩や軽い運動をすることです。睡眠リズムをコントロールする脳の中枢が働き始めます。

何か趣味があれば、それに没頭することも効果があります。

要は、眠ることばかりを考えずに、生活の生き甲斐を見出すことが何よりも大切なのです。 

どうしてもうまくいかない場合には、精神科医か、心療内科医にご相談下さい。最近は、依存性が少ない安全な睡眠導入剤がよく用いられています。

あなたの睡眠障害のパターンをよく調べて、速効性で排泄の早い薬と、効果が持続する薬を上手に組み合わせて処方してくれます。どうしてもこだわりや不安が強いときには、日中、抗不安薬や抗うつ薬を併用することもあります。

お薬を上手に使いながら、生活の仕方、ものごとの考え方を担当医とじっくり相談して下さい。ふと気がつくと、お薬を飲まずに眠れるようになります。



■転勤になってから通勤電車に乗れない。

相談

会社員です。4月に転勤になりました。いまは営業の仕事をしています。転勤のせいかどうかわかりませんが、朝、電車に乗ろうとすると、息苦しくなり、動悸が激しくなります。二週間ほど前、めまいもして倒れてしまい、駅員の世話にもなりました。それ以来ますます電車に乗ることが怖くなり、たびたび会社を遅刻したり、休んだりしています。内科に行ってもとくに貧血などはなく、心臓にも問題がないと言われ、困っています。(39歳、男性)

回答

私たちは、ふとしたきっかけで漠然とした不安を感じることがよくあります。不安な状態になりますと、程度の差はありますが、頭痛、胃痛、動悸、めまい、胸部圧迫感、息苦しさ、冷や汗、口乾などのさまざまな自律神経症状が表れます。

初めて登校するとき、テストの前、初めてのデートのとき、新しい職場に転勤したとき、重要な会議で発言しなければならないときなど、ある種の切迫した状況になりますと、人間は誰でも不安になります。しかし、このようなハッキリとした理由のある不安は、正常な心の動きですし、不安によって精神的な緊張が高まり、集中力が増してよい結果を得ることもあるはずです。その意味では、不安は大切な働きを持っているとも言えます。

ところが、あなたのように、逃げ出すことができず、助けてくれる家族もいない通勤電車の中で、予期できない息苦しさ、動悸、めまいが繰り返し表れるようでは問題です。
あなたの場合は、内科で検査を受け、貧血もなく、心臓にも異常はないとのことですので、不安神経症、とくにパニック障害が最も考えられます。

パニック障害は、何らかのショック、心配事、悩み、ストレスなど、精神的な原因と思われるものがある場合もありますが、とくにこれといって取り上げるほどの問題が見当たらないこともあります。あなたの場合には、四月に転勤して職場が変わり、多分仕事の内容も変わったのでしょう。満員電車で通勤し、慣れない営業の仕事をするのは大変なストレスとなります。転勤前と同じ仕事の内容であったとしても、職場が変わると不安になり、どうしても過労や睡眠不足になりがちです。

このようなときに、たまたま風邪をひいたり、二日酔いであったりして、体調が悪いことがあると、突然、種々の自律神経症状が表れ、ときには「死んでしまうのではないか」とか「気を失ってしまうのではないか」と思うほどの恐怖感に襲われることがあります。あなたのように駅員の世話になることもありますが、心臓発作を疑われ、救急車で病院に運ばれることもしばしばあります。しかし、このような症状は、数分から長くても数十分ですので、病院で検査を受けるころには治まっており、検査にも異常はなく、そのまま帰されます。しかし、数日もしないうちに、また同じような状況で、同じような症状が表れ、たびたび繰り返すようになるものですから、予期不安が強くなります。 

予期不安というのは、「またあのような発作が起きるのではないか」と、症状の発現を予期して不安になることです。さらに電車や駅など、人混みの中で発作が起きたらどうしようかと不安になり、人混みの中に出ることもできなくなります。会社を休んだり、通勤時間帯を避けて、電車がすく時間帯に出社するようになり、遅刻が多くなります。

医師から「異常はない」と言われても不安はとれず、いくつもの病院を転々として、検査を繰り返し受けるようになります。初めは心配していた家族や会社の人たちも、たびたび同じような状態を繰り返している本人に冷たくなり、「病院で異常がないと言われているのに」とか「気のせいだ」と突き放すようになります。本人がどのくらい苦しみ、悩んでいるのかを理解しようとしません。たしかに内科的な検査では異常はないのですが、パニック障害という、本人にとっては耐え難い不安と苦痛を伴う状態であることを、本人、家族、ときには会社の人にきちんと説明し、この状態について正しく理解してもらうことが治療の第一歩です。 

その上で、抗不安薬や抗うつ薬を処方してもらい、どうしても強い不安に襲われそうになったときや、予期不安が出たときに飲む「頓服」も出してもらいます。薬を飲み始めますと、嘘のようにスーと症状が消失する例もありますが、半年から1年くらいは、医師の指示を守って薬を飲みながら、慎重に様子を見たほうがよいと思います。外出、通勤がどうしてもできない場合には、段階的に慣らしていく行動療法を行ないます。筋肉を弛緩させ、リラックスした状況を想像するリラクゼーション・トレーニングや、過呼吸にならないように呼吸の仕方をコントロールする呼吸訓練などもあります。

パニック障害の治療は、ただ薬だけ飲んでいるとよいというものではありません。自分の不安、悩みをじっくり相談できる専門医の治療を受けることも大切なことです。


■息子がどもってしまう

相談

三歳半の息子のことでご相談いたします。二歳半ごろまではとくに問題もなく健やかに成長してきたのですが、二歳八ヵ月ごろからどもるようになりました。ちょうどそのころに妹が生まれたので、それが原因かとも考えております。このごろはどもることがひどくなって、家の外では話さなくなり、おねしょもするようになりました。
(母親24歳)

回答

二歳半から五歳くらいの間は、ことばの数が急に増え、お話しが活発になる時期です。この時期の子どもは、近所のお友だちとの遊びに没頭し、幼稚園・保育所で楽しいことをいっぱい経験し始めます。幼い子どもは、ワクワクするような楽しい経験を両親に少しでも早く話そうと、息せききって帰ってきます。話したいことが頭の中にいっぱいあり過ぎて焦ってしまい、話し方のリズムが乱れてしまうことがあります。これが、いわゆる「どもり」といわれる現象なのです。

ことばが発達する段階では、どの子どもも多かれ少なかれこのような現象を示すものです。ほとんどの場合、だれも気づかぬ内にリズムの乱れは消え去り、自然な話し方をするようになるのですが、ときにはリズムの乱れが長く続いてしまうことがあります。

誰でも良く経験することですが、興奮すると話すリズムが乱れてしまい、どもってしまうことがあります。その意味では、話しことばのリズムの乱れは、きわめて普通の現象であり、障害とか病気と考えるべきものではありません。「どもり」ということばそのものを持たないアメリカ・インディアンのある種族では、どもりの子どもがいないといわれております。英国では、とつとつと、ややどもりながら話すのが紳士の嗜みの一つといわれているくらいです。

子どものどもりを心配して相談にくる親の多くは、叱ることが多く、几張面で完全主義的な育て方をしています。子どもがどもることを気にして、「ゆっくり話しなさい」、「息をゆっくり吐きながら話しなさい」などと注意して無理やり直そうとしたり、不快さを表情や態度に現してしまいます。このようにしていると、子どもはやがて自分の話し方が皆から不快に思われていることに気づき、話す前から緊張し、そのために一層どもってしまうのです。親から注意されないように上手に、完璧に話そうとするときの子どもの緊張と不安は、大変なものです。

もうお判りかと思いますが、どもっている子どもに、話し方についての注意を絶対にしてはならないのです。注意しないということは、ことばでいわないということのほかに、親の表情や態度にもあらわさないということです。子どもが話すのを無視したり、矯正するのではなく、ゆったりとした態度でごく自然に、こころゆくまで聞いてあげることが必要なのです。話し方が少しくらいあわてんぼうでも、幼稚園であったことをこころを弾ませながらいっぱい、楽しそうに話してくれることのほうがもっと大切なことなのです。

また、ご心配のように、妹の誕生が、この子どもにとってストレスになったのかもしれません。弟や妹が生まれると、一時的に赤ちゃんがえり(退行)をして、夜尿や日中のおもらしをしたり、どもったりすることがよくあります。心配することではありません。しかし、赤ちゃんが生まれることをどのように子どもに伝えていたのかが気になります。子どもなりに理解できる話し方で、きちんと説明しておくべきでしょう。お兄ちゃんになることの楽しみを、ゆっくり話してあげてほしいものです。

このほかにも、引っ越し、家族の病気、きつく叱りすぎた、お稽古ごとが多すぎるなどのストレスが、原因になることがあります。子どもは、不安をあらわすサインの一つとして、どもり始めるかもしれません。抱っこをしたり、一緒にお風呂に入ったり、楽しく遊んだりしてあげて下さい。

ほとんどの場合、小学校に入るころまでには普通にお話しができるようになります。しかし、どもりが長引いて子どもが気にし始めたり、家の外では話さなくなったりする場合、または小学生になってもどもっている場合には、ことばの専門家にご相談下さい。多くの小学校には「ことばの治療教室」があり、就学前の子どもも、専門の先生が相談に乗ってくれます。ストレスが強く、複雑な心理的な問題が関与していると考えられる場合には、児童精神科医にご相談下さい。日本では、まだ「児童精神科」の標榜が正式には認められておりませんが、お近くの児童相談所や教育研究所に訊ねると、その地域にどのような児童精神科医がいるのかを教えてくれます。

また、大人になってもどもりが続いているケースがあります。意外なことですが、雄弁家、政治家、落語家など、話すことを主とする職業に就いていることが多いのです。これまでのつらい経験を生かして、話すときのタイミングや調子の取り方などを工夫し、人々の心を惹きつける魅力的な独特の話し方を修得したのでしょう。まさに、「災いを転じて福となす」人々です。自信を持って下さい。



■人前で話ができない。

相談

普段は明るく快活で人前で話をするのも苦になりません。しかし、先日、友人の結婚式でのスピーチの時、倒れてしまうのではないかと思うくらい動悸がして、声もうわずってしまい、何を話したのかまったく覚えていませんでした。それ以来、人前で話すときはいつもそんなふうになってしまいます。なぜなのか教えてください。(24歳男性)

回答

いくつかの病気(病的状態)が考えられます。
一つは、「不安神経症」という病気です。その日の体調が悪い場合、たとえば風邪気味とか、睡眠不足であったとかで、話している途中で気分が悪くなることがあります。そのときの部屋の換気が悪くて、暑苦しく、気分が悪くなることもあります。このようなときに、頭の中が真っ白になり、ボーとして何を話しているのかわからなくなり、とても恥ずかしい思いをすることがあります。
 非常に真面目で、なにごともきちんとしなければ気が済まない完全主義的な人は、このような恥ずかしい体験にとらわれてしまい、同じような状況になったらまた失敗をするのではないかと不安になります。この次は、体調が悪くなくても不安が先に立ち、人前で話すことができなくなることがあります。これが不安神経症の予期不安といわれる状態です。
対策としては、自分が今後、同じように人前で話しをしなければならないとしても、同じように苦しくはならないことを銘記することです。それでも、不安が続くようでしたら、精神科を受診して、軽い安定剤や抗うつ薬を処方してもらい、不安になったときにどのように対処したらよいのかを具体的にご相談下さい。比較的簡単に症状はとれます。治療を続けているうちに、自分の状態がわかるようになり、不安になったときにどうすれば良くなるのかというコツを会得するようになります。不安になりそうなときに、安定剤を頓服として飲んでいる方もたくさんいます。

二つ目は、ふとしたきっかけで、人前で話すことができなくなる「対人恐怖症」という病気です。身内や親友のような本当に親しい人、または、まったく関係のない人々の前なら平気で話ができますが、会社の同僚とか、クラブのメンバーなどのように、中間的な距離の人たちの前では、自分がどう思われているのかとても気になる状態です。
 対人恐怖症になる人は、融通性が乏しく、何ごとにつけても「だいたいこんなものだ」と割り切れないタイプの人にみられます。人前で話すときに、声が震えるのではないか、お酌をするときに手が震えるのではないかと不安になったり(振戦恐怖)、人前に出ると顔が真っ赤になり、不快な印象を与えるのではないかと不安になったり(赤面恐怖)します。どの症状も、日常生活ではごく当たり前にみられる生理的状態の変化なのですが、それを特別のものと考えてしまいがちなのです。
 このような状態は、本人には大変苦痛ですが、家族を含めまわりの人には到底理解してもらえません。多くの場合、どこで相談したらよいのかわからず、一人で悩んでしまいます。最近は、このような症状によく効く安定剤がありますので、精神科医に気軽にご相談下さい。大切なことですが、薬を飲むと同時に定期的に精神療法(カウンセリング)を受けて下さい。

 このような状態は多かれ少なかれだれにでもあることだし、自分が気にしているほどにはまわりの人々は気にしていないことをよく理解してください。


 ヘルスサイエンス「心の健康相談室」

(続く)







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